一輪の廃墟好き

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一輪の廃墟好き 第147話~第148話 抵抗・番外編13~14・得たり

未桜は相変わらず新川頼子さんの遺体を念入りに調べていた。 期待値は底をつくほど低い彼女だけれど万が一があるかも知れないの取り敢えず放置し、被害者の衣服は僕と淀鴛さんの二人で調べることにした。 壁際に置かれた折り畳み式のテーブルの上へ、一人一...
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一輪の廃墟好き 第144話~第146話「場違い」「老化」「看護師」

 無論、と言っても良いだろう。 僕の試したいこととは、犯人が意図せず残したかも知れない手がかりを探し出し、特殊能力である「想いの線」を発動させることであった。 僕に訊かれた淀鴛さんは僅かなあいだに遺体安置室を一通り見渡し。「...ちょっと待...
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一輪の廃墟好き 第141話~第143話「黙祷」「被害者」「弾力」

 ほどなく遺体安置室へ赴きすぐさま僕たちの視界に入ってきたのは、パイプベッドに横たわり白い布をを顔面に覆い被された被害者夫婦の二体の遺体であった。 普通に考えて当たり前だけれど、室内は静かなもので音楽など流れておらず、シーンと静まり返る室内...
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一輪の廃墟好き 第138話~第140話「新鮮」「治外法権」「蘇生」

 ぐったりした僕たちを見かねたのか、淀鴛さんは車を車道の端に寄せて停車してくれた。 と言うか途中で気付いてくれたら尚よかったのだが...「いやぁ、二人とも車に弱いんだな。意外だったよ。俺が一服するあいだに外へ出て新鮮な空気でも吸うといい」 ...
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一輪の廃墟好き 第135話~第137話「予定変更」「鬼ドラ」「気絶寸前」

 僕は考える... 今回の場合、誰からの依頼も受けていないのだから報酬は当然望めない。だが事件に一度首を突っ込んでしまったわけだから... 時刻は今や午前11時。病院へ行くとなると移動時間などを含めれば3時間を費やしてしまう... それにそ...
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一輪の廃墟好き 第132話~第134話「断定」「結果オーライ」「病院」

 探偵稼業をやっていてたまにふと思うのだけれど、人探しや物探しには集中力や洞察力が必要なのは言わずもがな、やはり運というか予期せぬ事象や視点を変化させることによって革新的に進捗する場合がある。 それを僕にもたらしてくれるのが助手の未桜だった...
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一輪の廃墟好き 第129話~第131話「心のケア」「違い」「死」

 彼女には気の毒なことをしてしまった... 「気配り」などと軽く云ってしまったけれど、いくら成人に達しているとはいえ彼女はまだ23歳。長寿国の日本において彼女の年齢はどう見積もっても若い部類にあたる。 根拠不明な胸騒ぎに気を取られていたこと...
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一輪の廃墟好き 第126話~第128話「雑音」「警官」「寝室」

 車から降り、事件のあった家屋へ歩いて向かう。 何気なく空を見上げれば、先日の雨が嘘のようにカラッと晴れており、春という季節の暖かみを感じた。 だが目的地が近づくにつれ、ごった返した人々による話し声が雑音になって耳に届き、風情を楽しめるよう...
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一輪の廃墟好き 第123話~第125話「殺人事件」「現場」「人だかり」

「あっ!そうそう...ちょっと言いづらいのだけれど...」 テキパキとした女将さんにしては珍しく歯切れの悪い物言いをする。それに「ちょっと」の意味合いとは程遠い深刻な面持ちになった。 そんな姿を見せられては言いかけた言葉を聞き出さないわけに...
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一輪の廃墟好き 第120話~第122話「カチン!」「朝食」「一択」

 朝食を食べたいがためであろう、未桜は二日酔いの症状など一切見せずリュックから着替えを取り出すと、僕がそばに居るのを忘れているのか、はたまた夢見心地で寝ぼけているのか、普通に着用している服を脱ぎ始めた。「こらこら、僕がそばに居ることを忘れる...