夢中の少女

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夢中の少女 [第一章 最終話]

 いきなりの大声に母と僕が同時に自己防衛反応を起こし身体をビクッとさせる。 雪の降り積もる静まり返った状況で、視覚に入っていない人の声が唐突に響けば誰だって驚く筈だ... 母が声に気を取られ、トイレの窓を開けっ放しにして後ろを振り返り玄関へ...
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夢中の少女 [事の始まり] [物音の招待]

「ちょっと早いけどお茶にしちゃおうかしら」 調理器具などの片付けが終わり、冷蔵庫横の壁に掛けられた時計で時間を確認する母。 時刻は午後2時半過ぎ。 手際良くインスタントコーヒーを作った母は、煎餅などの茶菓子が入った茶菓子器とコーヒーカップを...
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夢中の少女 [家事の対価]

そこから午前中のあいだずっと張り付いて母を見ていたが、居間の押入れの整理などをしていただけで特にこれといって不審な動きもなく、失踪に関連しそうな予兆は全く感じられない。 やはり母の失踪は自主的なものでは無いらしい。とすれば他人が絡んでいる可...
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夢中の少女 [子供の夢]

 母はこたつの上にクリスマスカードを置き、手を添えボソボソとした聴き取れない声で呟きながらメッセージを書き出した。 そのメッセージの内容は今でも一言一句覚えている。 小学生当時のクリスマス翌日の朝、父にはプレゼントに対する感謝の気持ちを伝え...
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夢中の少女 [タイムトラベラー]

 こたつとテレビの電源点け、朝のワイドショー番組を視ながらお茶を飲む母。 そんなゆっくりとお茶を飲む姿を見ながら、ふと自分の状態について考える... 喉は渇かないし食欲も無い。 普通の人に僕の姿は見えないし声も届かない。 僕はこんな自分の状...
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夢中の少女 [目を離さない]

結局、小学6年生で迎えたクリスマスの日から母は帰らず、捜索も行われたのだが見つから無かった。 物語は僕が少女と会話をした世界から強制的に飛ばされた母の失踪当日の朝に戻る。 奇跡的に母の失踪の真相を知る機会を与えられたのだから、何としてでも真...
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夢中の少女 [プレゼントより…]

「気を使ってくれてありがとな...おやすみ」  父と就寝前の挨拶を交わし居間を出て自分の部屋に移動すると、エアコンが点き程良く暖まっていた。 日頃はエアコンを使用しないのだけれど、今日のような特別寒い日は父か母が点けてくれる。 明日からは冬...
夢中の少女

夢中の少女 [洗濯物]

 警察の人を玄関で見送ったあと、落ち着いた優しい顔をして父が言う。「凪、まだ風呂にも入って無かったな。直ぐに沸かすから準備しておいで」「ありがとう父さん」 着替えを取りに自分部屋へ行き、タンスを開けて着替えの準備をしながらふと思う。 母さん...
夢中の少女

夢中の少女 [何も無い]

居間に戻り今度は僕への質問が始まった。 ベテラン警官は強面な顔だったけれど、小学生の僕に気を使ったのか、無理やり優しい顔をしようとして頬の辺りがピクピク動いている。「凪君は今日は学校があったんだよね?」 例年通りなら昨日が終業式だったのだが...
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夢中の少女 [手掛かり]

「では、お話を詳しく教えてください」 ベテラン警官が事情を尋ね、若い警官が手帳を取り出しメモを取る。 まずは父から一日の行動を説明した。 今朝いつものように起きると、外に雪が降り積もってるのを見て畑が心配になり、「今日は外に出なくていいから...