建設業の総合原価計算
建設業法施工規則様式第16号
「兼業事業」とは、建設業以外の事業を併せ
て営む場合における当該建設業以外の事業を
いう。この場合において兼業事業の表示につ
いては、その内容を示す適当な名称をもって
記載することができる。
同規則様式第19号(個人企業の場合)
建設業以外の事業(以下「兼業事業」とい
う。)を併せて営む場合において兼業事業に
おける売上高が総売上高の10分の1を超える
ときは、兼業事業の売上高および売上原価を
建設業と区分して表示すること。
これらのケースにおける製品生産は、多くの
場合、見込生産として実施されるから、原価
計算上は、総合原価計算と呼ばれる技法が採
用される。
建設業では、このような原価計算は、あくま
でも副次的な手法として位置づけられてよい
が、他の業種の多くがこの手法を実践してい
ることや、近年の建設業EC化の動向などを考
え合わせれば、建設業の経理あるいは原価計
算担当者にとって、この総合原価計算も、必
須の原価計算知識であると考えておかねばな
らない。
総合原価計算的手法が活用されるケース
a.関連事業で総合原価計算を実施する局面
○自家消費資材・教材の製造(工場原価へ)
○外部販売資材・機材の製造(売上原価へ)
○建売住宅、マンション等不動産の建築
(売上原価へ)
○インテリア商品の開発・生産・販売
(売上原価へ)
b.工事原価計算中に総合原価計算手法を
活用する場面
○仮設資材のすくい出しの際に、当該資材
の購入原価から評価額を控除して消費原
価を計算すること(差引計算)
○土木工事等によって生ずる残土等再利用
する際に、その評価額を工事原価から控
除して当該工事原価を計算すること
(差引計算)
○部位別、或いは部分別原価情報の計算に
際して、ジョイント・コストを等価係数
によって案分計算すること
(等価数計算)
総合原価計算の特徴
一般的に「単位あるいは異種の標準仕様化
された製品を、同一の製造区域において、
連続的ないし比較的大量に生産する場合、
一定期間に発生した原価を、その期間の多
様に工夫した生産データで除して、最終的
に単位当たりの製造原価を求める原価計算
手法である」と定義される。すなわち、総
合原価計算は、1原価計算期間において発
生した総製造費用を同じ期間の生産量(換
算されたデータを含む)で除して、製品の
単位当たり原価を計算する方法を基礎とし
て展開されるものである。
個別原価計算との相違点
○標準的な規格製品を量産する見込生産形
態の企業に適している
○個別原価計算では、各特定製造指図書に
示された製品生産量が原価集計単位とな
るが、総合原価計算では、原則として1
原価計算期間における生産量が原則集計
の基本単位となる。
○企画製品の反復的な生産を指示する継続
製品指図書は発行されるが、個別原価計
算のように、原価集計の重要資料として
利用されることはない。
○総合原価計算では、原価計算期間末での
未完成状態の製品、すなわち仕掛品の評
価が計算上の重要なポイントになる。
○総合原価計算では、組別総合原価計算で
の組間接費の配賦を除き、直接費と間接
費の区分は意味をもたない。直接材料費
(素材費、原料費、材料費などとも呼ば
れる)と加工費(原則として直接労務費
と製造間接費)の区分が重要である。
以上のような特徴から、一般の実務では、
個別原価計算…受注生産形態の企業
総合原価計算…見込生産形態の企業
に適していると考えられている。
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