僕達の世界線は永遠に変わらない [自身の生死を決めるのは]

僕達の世界線は永遠に変わらない

聞いた直後に柴門さんが眉を顰め、右の手の平を天井に向けて差し出す。

「いやいや、八神さん。それは良くないな。はい、出して」

「………………….」

 八神さんがその手の平を暫くのあいだ黙って睨みつけ、場の空気がピキンと音を立てるかのように凍りついた。

 目線を手の平から柴門さんの顔に写して話し出す。

「自身の生死を決めるのは自身の自由意志によるものだと僕は考えているのだけれど、君はその考えが間違っているとでも言いたいのかな?」

「なにっ!?」

「バン!」

 一言発した柴門さんの白い肌がみるみるうちに赤みを帯びて、差し出していた手で長テーブルを叩き怒りを顕にする。

「パン!パン!」

「はい、その辺で二人とも止めてね~。まだ俺の話しが終わってないよ」

 飛鳥井さんが拍手して一触即発の二人に呼び掛け止めに入った。

「悪かったね」

「すまん、続けてくれ」

 二人とも飛鳥井さんの方を向き、えらく素直に謝って場の空気も少しは和らいだ。
 のほほんとしているように見えるが、この人には結構リーダーシップがあるのかも知れない。

「八神さん。念のために言っておくけど、紫門の言動は貴方の事を心配しるからこそなんだと思うよ。まぁ、貴方の言った通り個人の生死を決めるのはその個人の自由だとは俺も思うけどね…よし、話を続けるよ」

 柴門さんて怖そうな顔してるけど、人を思いやる心の持ち主なんだな…
 

「えーっと、そうそう、んで八神さんを含めて三人で荒れた商店街を食料を求めて歩るき回っていると、美琴が道のど真ん中で倒れているのを見つけて駆け寄ったんだが意識が無くてね…」

 ここで飛鳥井さんが美琴さんの方を向くと、美琴さんが黙って首を横に振る。

「うん、美琴がなぜ道のど真ん中で倒れていたのかは端折らせて貰うよ。取り敢えず生きているのを確認した俺達は近くの総合病院へ美琴を運んだんだ」

 話を聞いていて想う。
 この人達の取っている行動って、実はもの凄いことなんじゃないか?
 情け無い話だが、神の戒告以前の日本人にそんなに人助けをするようなイメージが僕には無かった。
 いや、みんな忙しい日々を過ごしていた平常時だからこそ出来なかっただけで、今みたいな緊急事態であれば人は人を助けるという行動を取れるのかも…

「匡~、聞いてるかい?」

「すっ、すみません。続けてください」

 話し手が長話しをいていると、たまに頭の中で考え事をしてしまう僕の悪い癖だ。

 飛鳥井さんはペットボトルの水を一口飲み話を続ける。

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