僕達の世界線は永遠に変わらない [疎らな覚醒]

一代!自由研究僕達の世界線は永遠に変わらない

「その話、もし良ければ詳しく教えてもらえませんか?」

 飛鳥井さんの表情が曇っているのは分かっていたが、興味の方が勝りきいてしまった。

「話すのは構わないけどグロいよ」

「グ、グロいところは飛鳥井さんの匙加減で調節してもらえると助かります」

「まあ良いか…俺はここに住んで無かったからよく知らないけど、この住宅街には以前からカラスが多かったんだろ?」

「はい。僕が小学生の頃から増え出してるのは小耳に挟んでました。たまに母からカラスによる被害情報も聞いたりしてましたし…」

 カラスは鳥の中でも非常に頭の良い動物で、中には人間を恐れず悪戯をしてくるのは珍しい話では無かった。

「俺の推測ではこの住宅街の住民は、結構な人数が覚醒したカラスに襲われた可能性が高い。君も実際に対峙して分かっていると思うが、覚醒後のカラスには普通の人間の力では太刀打ち出来ないんだよね」

 確かに普通の人間があんな化け物カラスに突然襲われたら混乱して逃げ回るのが関の山だろう…

「でも全生命体が漏れなく覚醒する訳だから、ここの住民の人達もそれなりに対抗したと想うんですけど」

「うん、俺も初めの頃はそう考えたんだけどね。覚醒した人間と動物を一ヶ月近く見て来て分かった事があるんだよ…それは、実際に覚醒する力の系統が人間と動物では明らかに違うという事だ」

「系統って、攻撃系や回復系とかの分類分けみたいなやつですか?」

「そうそれだ。知能や身体的なものが影響してると想うんだけど…ほら、動物って人間に比べて圧倒的に野性味があるだろ。だから攻撃的なナインスセンスを覚醒する確率が高い。それに対して人間の場合は覚醒するナインスセンスが攻撃系や回復系、俺の瞬間移動みたいに特異な系統もあったりして疎らなんだよ」

 言っていることは何となく分かった。
 ゲームで例えるなら回復系の魔法しか使えない僧侶では、ガチガチの攻撃系である戦士などには勝てないという事だろう…
 
「付け加えておくと、ナインスセンスが覚醒すると同時に身体的能力も確実に飛躍的向上を遂げているはずなんだ。もちろん全生命体に当てはまる事象で伸び幅にも個体差があるみたいだけどね」

 そっか、僕の身体能力の向上に関しては特別なことでは無かったのか…

「いかんいかん、前置きというか、また説明染みた話しになってしまった。済まない。話しを本題に戻すよ」

「いえいえ、何も知らない僕には飛鳥井さんの話しはどれも貴重な情報ばかりで良い勉強になってます」

 本心でそう想う。
 もしこの人が目の前に現れなければ、変わった世界に無知な僕は一日と持たず死んでいたかも知れないから…

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