地球上にある全ての物体を消滅させる力なんて超やばいに決まっているじゃないか…
「そして、もう一つ。君には自己治癒能力に似た能力がある。肉が裂け骨まで見えて千切れそうだった腕が瞬時に復元しただろう?」
「は、はい。自分でも驚きましたけど…」
「現状においての話だが、破壊系の能力と回復系の能力が共存している生命体は君くらいのものじゃないかな。通常、ナインスセンスというやつは一人に一つ発動する。その能力を鍛えれば発展させることが可能だけど属性は変えられない。つまり、消滅と復元と相反する属性が君の中に共存していること自体が奇跡だということさ」
「…奇跡、ですか…」
飛鳥井さんの言っていることは理解できたが、もはや僕自身の身体では無くなってしまったような怖さもあった。
「そんな奇跡が君に起こったのは恐らく、病気の治療中に入っていたポッドが影響していると想うんだ」
僕が治療中に一カ月入っていた人体万能治癒ポッドは、親父の発明品で世界に一つしかないはず…飛鳥井さんの推測はあながち外れていないかも…
「もしかしたら、そうかも知れませんね」
「オーケー、今のところ君のナインスセンスについて分かっているのはこんなとこかな」
「ありがとうございます。あの、ついでと言っては何ですが、飛鳥井さんの能力も教えてもらえると嬉しいです」
「ん、大体の見当はついていると想うけど、テレポート。瞬間移動ってやつだな。ただ、目視で認識可能な場所までしか今は移動できない。これから鍛えればもっと長距離を移動できるようにはなるはずなんだが… よし!俺の能力もお披露目しちゃおう!あそこの赤い屋根の家に行って戻って来るから見てて」
「ヴン!」
飛鳥井さんの姿が突然目の前から消え、指示していた赤い屋根の上から手を振っている。
「わ、本当に移動したっ!?」「ヴン!」
と言ったと同時に目の前に戻って来た!?
「どうだい、俺のナインスセンスもなかなかのものだろ?」
「はい!本当にすごいです!驚きです!」
僕の能力も現実離れしているが、飛鳥井さんの瞬間移動も十分に驚愕するレベルだった。
「ちょっとナインスセンスの話に脱線してしまったから、そろそろ話を元に戻そうか…っと、どこまで話したんだっけ?」
僕もどこまで話を聞いていたか忘れたけれど、何とか思い出そうと記憶を辿る。
「え~っと確か…動物や刑務所の囚人達が事件を起こした日の話までです」
「ああ、まだ序盤も序盤のところだったか…そうだな…神の戒告のあった初日から日本中がパニックに陥ったわけだけど、二日目から更に世界はおかしくなって行ったんだ」
コメント