隣地にある二階建ての家の屋根に紫門が着地して、自ら起こした爆煙の舞う地点を眺める。
曇り空のなか、やや強めの風が吹き始め、モクモクと上がる爆煙が横へ流され徐々に灰色が薄まって行く…
「げっ!?やっべぇ…こりゃやり過ぎちまったかもなぁ。車庫も吹っ飛んじまったか。かーーーっ!勿体ないことしちまったーーーっ!」
柴門が爆煙の消えた現場の燦々たる状況を見て嘆き天を仰いだ。
覚醒し巨大化したサバンナモニターの身体は粉々になり、千切れた手足や尻尾が散りじりに転がっている。
一対一の戦闘は柴門の前言通りの結果となったわけだが、その他の結果を予測していなかったことに彼の落ち度があるだろう。
家は骨組みを僅かに残した形でほぼほぼ全壊してしまい、家の敷地を囲んでいたコンクリート製の塀も下の部分が残っている程度であった。
手に入る筈だった4WDの自動車も漏れなく車庫ごと吹き飛び、全てのガラスが割れた状態で道路に投げ出されている。
もうこれは狂ったモンスターのように箍の外れた攻撃をしてしまったお馬鹿な柴門の所為としか言いようがない。
そんなお馬鹿な柴門が何かを思い出したように呟く。
「あれっ!?あいつら何処まで逃げたんだ?まさか爆発に巻き込まれてたりしないよな…」
慌てて周りを見渡すが二人の姿は影も形も無い。
洒落にならんことになったんじゃねぇよな!?焦燥感に駆られた柴門が見えない二人に大声を出して呼びかける。
「葵さん!美琴ーーーっ!居るなら返事してくれーーーっ!トカゲは片付けた!もう安全だぞーーーっ!」
「ガラガラガラ!」
「うるさいなぁ!もう!すぐあんたの真下に居るから叫ばなくて良いわよ!…でもあのトカゲに勝てたのね。やるじゃん!柴門君!」
柴門が上空から着地した二階建ての家。二階の部屋の雨戸が勢いよく開き葵が顔を出して、角度的に互いの顔は見えていないが呼びかけに応えた。
「なんだよ。こんなとこに避難してたのか。まぁ無事なら一安心てもんだ」
ホッとした表情の柴門がそう言いながら葵の居る部屋へ軽やかに移動する。
部屋の中は若い女性が住んでいたというのが一目瞭然の内装をしており、若い女性の好みそうな備品やグッズが備わっていた。
使用者が不在で放置されたままのベッドには、サイコキネシスという強力な能力の持ち主である美琴が気持ち良さそうに眠っている。
今回の戦闘では無力だった美琴の寝顔を眺めながら、特に怒りを表すわけでもく柴門が言う。
「いつもクールで強気なこいつが、ただの爬虫類を見ただけで気絶するとは思いもしなかったぜ」
断じてただの爬虫類では無かったけどな、柴門翔悟。
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