凄惨な光景を三人と一匹が見たいた頃。
もう一人の男も、三人を探す足を止め、家屋の屋根上からその光景を眺めていた。
「これは八神さん達の戦闘後だな…相当な数の敵とやりあったようでけど大丈夫かなっと!?」
辺りを見渡す飛鳥井の目に三人と一匹の姿が映った。
「あんなとこに居るじゃないか。ラッキー♪」
「ヴン!」
言うや否や瞬間移動で八神らの正面へ移動する。
「ヴン!」
「やぁ!三人とも無事で何より!」
「あ、飛鳥井君!?」
思いもよらぬところで突然正面に現れた飛鳥井に八神が驚き腰を抜かした。
「何で飛鳥井さんがここへ?」
「ああ、実は早くも緊急事態になってねぇ。あっちにラスボスが現れたから三人を連れ戻しに来たんだよ」
匡の疑問に全く緊急事態を感じさせない落ち着き払った風で飛鳥井は説明した。
「ラスボスって、飛鳥井さんの言ってたカラスの王が現れたという事ですか?」
「そゆこと~。だから三人とも俺につかまってくれないかな?出来るだけ早くアジトへ戻りたい…ん?その虎は?」
今度は美琴の疑問に答える最中に飛鳥井がチャラの存在に気付いた。
まぁ2mを超える猫が近くに居て気付かないんてことも無いわけだが…
案の定、人間の常識的感覚からすると初見で猫と判断はされず、見た目だけで言えば完全な猫の姿をしたチャラは虎と勘違いされてしまった。
「でかくてもオレは猫でチャラと云う。さっきこいつらの仲間になったばかりだ」
「おっ!?」
チャラが短くぶっきら棒に人間の言葉で喋ると、飛鳥井が一瞬たじろいたものの笑顔で返す。
「そっかそっか。悪い悪い。覚醒してでっかくなって話せるようになった猫君だったか~。んじゃまぁ、これからは俺とも同志ってわけだ!よろしく~♪」
人間では無いが、仲間が増えたことを喜びご機嫌な感じで握手を求めて右手を差し出すと。
「バチン!」
「なっ!?」
差し出された飛鳥井の右手にチャラが電光石火の猫パンチを繰り出した!
痛みで腫れ上がりジンジンと痺れる右手を左手で押さえながら、あまり怒りの表情を人に見せたことのない飛鳥井が目を光らせる。
よほど痛かったのだろう…
「どうやらこの猫君にはちゃんと俺の実力を理解してもらう必要があるようだなぁ。おりゃっ!」
「ンニャーッ!」
そう言ってチャラに飛びつき、先程の匡との戯れ合いのようなドタバタ劇が始まった。
緊急事態だと言っていたくせに戯れ合う飛鳥井を止めるべく、結月が声を張り上げる。
「こらーーーっ!二人ともやめなさーーーい!!」
匡の時と同様、チャラの甘噛みで頭を丸かじりされた飛鳥井の顔には、少量の血がじんわりと流れていた。
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