キガイの技は完全に発動したわけではなかったが、名称からして上空に舞い上がった黒い羽根が降り注ぐことは大方の予測がつく。
それよりも、技を繰り出したばかりの敵に「隙あり!」と見た柴門が攻める!
「行くぜ!ショットガンボム!」
「ドムッ!」
柴門の右手から放たれた光球はいつもの綺麗な球型ではなく、楕円形のラグビーボールを彷彿させるような形をしていた。
「ふん!!」
顔面を狙ってくる光球を避けて回避する選択肢は元々無かったのか、キガイがボクシングでいうところのビーカブースタイルで素早く防御体勢をとる!
このスタイルは顔面をガードするには有効に違いない。が、反面、ボディ部分のガードが手薄になるというものだ。
「バシュッ!」
「カッ!?」
キガイにラグビーボール状の光球が届かんとする直前、弾けるようにバラバラとなって拡散し、極小の光球が防御に用している両腕はもちろんのこと、キガイの身体全体に次々と突き刺さっていく!
「ブシュッ!ブシュッ!ブシュッ!ブシュッ!ブシュッ!ブシュッ!」
「ぬぅっ!?」
身体に突き刺さり食い込んだ極小の光球が、肉の内部で爆発を起こしキガイの身体から花火のように鮮血が飛び散り唸らせた。
今日一日だけで自身の能力を分析して操るコツを掴み、新技のアイディアを考え編み出し、ぶっつけ本番の実戦でいきなり発動ししかも成功させるのは、柴門のずば抜けた戦闘センスが開花した言って差し支えないであろう。
してやったりといった顔の柴門が口を開く。
「そんだけ血が流れたんだ。いくらてめぇでも今度ばかりはノーダメージってわけにもいかねぇよなぁ!?」
「カカッ!能無しの人間だと見下していたがなかなかどうしてやるじゃないか。少しはお前の実力を認めてやろう。だがこれくらいの威力ではオレ様を倒すことなど叶わんぞ!」
カラスの頭であるため表情にあまり変化が無いキガイに対し、人間が他の動物よりも格段に発達している表情筋を動かし、睨みながらも戦闘を楽しむかのような表情を柴門が作り出す。
「ハッ!わざわざ言われるまでもねぇ!次の技もちゃんと考えてあらぁっ!なっ!!??」
意気揚々と叫び、続け様に技を繰り出そうとした柴門の動きがある現象に反応してピタリと止まった!
「カッカッカッ!やっとオレ様の羽根が舞い降りて来たようだ。これでお前の得意技は封じたも同然よ!」
自信を持って高らかにそう言った裏付けは確固たるものだったかもしれないし、戦略的に乏しい思考という表現も的を射ていなかったかも知れない…
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