沖田総司の忘れ形見は最高の恋がしたい! [流れに身をまかす]

沖田総司の忘れ形見は最高の恋がしたい!

そ、そうよね…客観的に考えてもやっぱりこれは「一目惚れ」よね…

「で、その冷泉様の年齢とお住まいは分かってるの?」

「年齢は一つ上、お住まいは知らないけど、道場を開いてらっしゃるようなことをおっしゃっていたわ」

 千歳が大きく目を開き驚いたような顔をする。

「えっ!?じゃあ逢いたいと想った時に直ぐ逢えないじゃない。次の約束とかは?」

「や、約束とかはしてないわ。それに樹様はわたしには興味が無いみたいだし…」

 やばい、話してて気持ちがへこんできたぁ…

「なるほどね…じゃあさ、今度の休みに冷泉様のことを二人で調べてみましょうよ」

 はぁっ!?また何を言い出すんだかこの親友は…
 お兄様の話題から切り替わったのは良いけれど、わたしの恋話で勇み足になってるような気がする。
 
「いや千歳、それはちと気が早すぎるというものでは?」
 
「そんなこと無いと想うけどなぁ。だって司の初恋の人なんでしょう。もっと頑張った方が良いんじゃないかしら?」

 …どうやら千歳の中ではわたしの「一目惚れの初恋」というのが確定しているようだ。
 でも不思議なもので、一人でずっと考えいると何だかモヤモヤしていたものが、人に言われるとそのモヤモヤが晴れてハッキリするような感覚がしてくる。
 たまには流れに身を任せるのも良いかもしれない…

「うん、決めたわ。土曜日までに樹様の道場が何処にあるのか調べてみる。もし道場の場所が分かったら、日曜日に千歳と二人で行ってみよう想う。それで良いかしら?」

 明治時代以降、外交や仕事において西洋の七曜が日常的に使用されるようになり、この頃には日曜日が休みという定義も確立されつつあった。

「さっすが司、そう来なくっちゃ。女は度胸が肝心よ」

 「女は度胸」かぁ…恋愛以外では自信があるんだけど…

「ガラガラガラ」

「はい!皆さん席に着いて~]

 親友との会話は神楽坂先生の入室により終了した。

 しかし兎にも角にも、今度の日曜日に樹様と再び逢えるかも知れない。そう考えると胸が高鳴り、ドキドキとワクワクが入り混じった感情になったものでした。

 午前中の授業は図画。
 鉛筆を使用して桜の木を描くため、学級の女学生全員が桜の木が植えてある校庭に移動する。

 校庭には10本ほど桜の木が立ち並んでいるのだけれど、満開の時期はとうに過ぎていて、全体の半分くらいの花びらが散ってしまっていた。
 
 その中でも出来るだけ多くの花びらが残っている木を選び、千歳と一緒にその木の傍に座って絵を描き始めたのです。

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