僕達の世界線は永遠に変わらない [能力の究極形ナインスセンス]

僕達の世界線は永遠に変わらない

動物園の動物の凶暴化…さっきの化物カラスのように豹変してしまったのだろうか…

「そのライオンが人を襲ったのって、やっぱり神の戒告とやらが関係しているんですよね?」

「うん、神の戒告のあったタイミングや内容から考えればその可能性は高いだろう…と言うか今はそれしか考えられない」

 僕は治療中に一度だけ聴こえた神の戒告の内容を何とか思い出そうとしていた。
 たしか「全生命体に告ぐ」と云っていたような…

「何か考えているようだけど話を続けても良いかな?」

「あっ!すみません、お願いします」

 飛鳥井さんがニコリと笑い話を続ける。

「動物園の報道を皮切りに日本中各地で様々な事件が次々に起こる。その中でも特に取りざたされていたのが刑務所囚人脱獄事件。刑務所の暴徒と化した囚人達が看守らに反旗を翻し、刑務所の機能を麻痺させ一斉に脱獄してしまったんだ」

 げっ!?それってかなりやばくないか!?
 囚人の犯した罪はピンキリだろうけど、その中には狂暴な殺人犯も居たわけだから…

「そんな事もあって、日本中の国民がパニックに陥るのはあっと言う間だった。そりゃそうだよな。たった一日であり得ない事件がそれだけ起これば誰だって混乱するさ」

 僕は飛鳥井さんの話を聞きながら、その日の悲惨な光景を想像して黙り込んでいた。
 そして、家に居ない両親や、結月と喬助のことが急に気になり出す。

 みんな無事でいるだろうか…

 飛鳥井さんが黙り込む僕を見て気遣ってくれたのか、少し間を置おいたあとまた話し出す。

「でね。数多くの事件がなぜ起こってしまったのか?についてなんだけど、俺達のあいだでは今のところ『生命体の覚醒』と呼んでいる現象が原因だと考えられている」

「あの、それって身体的能力が急に向上するようなものですか?」

「確かに身体的な変化もあるが、生命体の覚醒ってやつはそれだけに留まらない。簡単に言うと超能力ってあるだろ?スプーン曲げとかトランプの柄を透視したりするあれさ。その超能力の強化版みたいなもので、俺達はそれを『ナインスセンス』と呼んでいる」

 ナインスセンス?初めて聞く単語だな…

「君もある程度は知ってると思うけど、人や動物が持つ基本的な感覚機能の視覚、聴覚、触覚、味覚、臭覚の五感ってあるだろ。他にシックスセンスやセブンスセンスなんて呼ばれるものがあるけど、感覚機能と超能力を合わせた能力の究極形として『ナインスセンス』と名付けられたらしい。名付け親は不明だけどな」

 能力の究極形ナインスセンス…
 僕の身体に表れたあの異常な変化はナインスセンスが覚醒したと考えれば合点がいくような気がする…

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