虎かライオンだと思っていた動物は、よく見れば確かに猫だった。
可愛いが可愛くない体長2m以上はある茶トラの猫…
三羽の化け物カラスと対峙する巨大な猫が全身の毛を逆立て「フーーーッ!」と威嚇する。
「お前、人間の言葉が喋れないのか?」
三羽のカラスのうち真ん中の一羽が猫に話し掛けた。
「もちろん喋れるさ。だがお前らと語る必要は無いだろっ!」
猫が喋ったーーーっ!?と思った刹那!
カラスに飛び付き喉元に「ガブッ!」と噛み付いた!
「グゥギャー!」
噛みつかれたカラスが断末魔の叫び声を上げ絶命する。
あの化け物カラスをたったの一噛みで…
残った2羽のカラスは慌てて羽を広げ「ヴァサヴァサ」と激しく動かし上空に逃げた。
そのまま飛び去るのかと思いきや、ある程度の高さでグルグルと旋回を始める。
「カァーーーッ!カァーーーッ!カーーーッ!」
2羽が叫ぶようにけたたましい鳴き声を上げた。
猫が突然こちらを向きビタッと目が合う。
「おい!そこの人間達!隠れてないで逃げた方が良いぞ。あいつらは仲間を呼んでやがる。もうすぐここにとんでもない数のカラスが集まって来る筈だ」
この猫は僕達に気付いてたのか。
しかし、猫が僕達の身を心配するなんて…
「お前はカラスの大群とたった一匹で戦うつもりなのか?」
カラスと話した時と同じような違和感を感じながら僕は問いかけた。
「そうだ。あいつらはカラスの分際でオレの飼い主を殺しやがったからな。全滅させるまで戦ってやるのさ」
なにーーーっ!?猫って人に恩義を感じる動物だったっけ!?
いやいやそんなこと今はどうでも良い…
「そういう理由なら僕達とお前の利害は一致している。加勢するから一緒に戦おうぜ!」
「そうよ猫ちゃん!一緒に戦いましょ!」
「猫は苦手だけど加勢るよぉ」
僕が言ったあと、背に背負ったバックパックを壁際に下ろしながら結月と八神さんも続いた。
「ケッ、せいぜい足手纏いになるなよ。上を見てみろ。既に空は真っ黒だ」
猫に促され上空に目を向けると、いつの間にか化け物カラスの大群で真っ黒になっていた。
軽く100羽以上は集まっているだろうか?普通サイズのカラスならまだしも、巨大なカラスの大群がギャーギャーと鳴きながら空を飛ぶ様は不気味としか言いようがない。
1羽のカラスが猫を目掛けて急降下すると、他のカラス達もこぞって急降下を始める。
「あの数は不味い!猫!逃げろ!」
だが猫は、僕の叫び声が聞こえてる筈なのにカラス達の方を向いたまま微動だにしなかった。
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