世界樹とハネモノ少女  「風の剣技」

世界樹とハネモノ少女

「お、おわっ!?」

 ジャスカは咄嗟に身体を動かし風の刃を辛うじて避ける!

 風の刃は闘技場の壁にぶつかって消えたが、壁には亀裂が入っていた。

 それを見たジャスカの顔が青ざめ、観戦席からも響めきが起こる。

「なんて威力だ。あれを喰らえば身体が真っ二つだぜ…」

 ナーシャが口角を上げて言う。

「約束通り青ざめた顔にして差し上げましたよ。私としてはここで降参していただけると助かりますが?」

「降参する訳ないだろ!降参なんかしたら団員達に合わす顔が無いんでね」

「団長であれば尚更引く判断も大事だと思のですが…仕方がありませんね」

 そう言った直後、ナーシャがジャスカへ向けて走り出し叫ぶ!

「風の剣技!風衝進撃!」

 間合いを詰めたがまだ距離があるにもかかわらず剣を突き出した!

「突!」

 剣先から放たれた凝縮された風が待ち構えていたジャスカの身体に直撃する!

「なっ!?」

 風の圧力で身体が思うように動かない。

 そこへナーシャが剣を振りかざし飛び込む!

「斬!」

 ジャスカは覚悟を決め目を瞑ってしまう。

 だが、ジャスカの身体が斬られることは無かった。

 恐る恐る目を開けると…

 目と鼻の先にナーシャが見え、持った剣の刃が首を両断する寸前で止められていた。

 ナーシャが真剣な表情で言う。

「今度こそお願いします」

「ま、参りました」

 審判が試合の終わりを告げる。

「勝負有り!勝者はナーシャ!」

「ワーーーッ!!」

 観戦客らが一斉に歓声を上げた!

 負けたジャスカがナーシャに声を掛ける。

「姉ちゃんえらく強いな」

「あなたも中々のものでしたよ。それに私は次期剣聖七葉候補です。負けたことは恥ではありません」

「そうか、せめてもの救いだな」

 二人は互いの健闘を讃え合い、握手を交わして試合場を離れた。


 試合の一部始終を観ていたミアが感動して呟く。

「ナーシャさん綺麗で強くて素敵…」

 しかし次は自分の試合である事を思い出し、気を引き締めてシャキッとした顔になる。

「わたしも頑張るぞ〜!」

 気合いを入れながら試合場へ向かう。

 第二試合でミアの対戦相手はスレイヴと言う名の男である。

 実はこの男こそ、シャナンがミアに注意喚起した「人を殺すことを生業とする者」、つまりアサシンであった。

 スレイヴは裏社会で凄腕のアサシンとして知られており、かなりの高額報酬を要求することでも有名な人物らしい。

 二人が試合場に入ると声援が湧き上がる。

 特にこの大会最年少のミアにかかる声援が一際大きかった。

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