夕刻、セトの亡骸が家に届けられた。
届けたのはシャナン、バロック、ワッド、ニールの4人である。
シャナンが代表してジーナに説明と謝罪をした。
ジーナは事の顛末を反論一つせず聞き、全面的に受け入れた様であった。
既に棺桶に入れられたセトの亡骸をジーナとミアに見せる。
セトの顔は安らかだった。
「あなた、大変だったわね。今までご苦労様でした」
気丈に振る舞うジーナは涙一つ流さず、セトの冷たい頬に触れる。
一緒になって頬に触れたミアが言う。
「お父さん起きて!身体が冷たいよ。一緒にお風呂に入ってあったまろうよ〜」
それを見ていたワッドがミアに寄り添い話す。
「いいかミア、本当に残念だけどお父さんはもう二度と動かないんだ。人はこうやっていつかは死んでしまうものなんだよ」
ミアは納得がいかなかったのだろう、ムッとした顔になりワッドを睨む。
「ウソだ!ミアが小さいからみんなでウソついてビックリさせようと思ってるんでしょ!?」
ワッドが首を振り優しく話す。
「今は分からなくても良い。でもウソじゃないんだ。本当にお父さんは死んでしまって動かないんだ」
遂にミアが癇癪を起こして泣き出した。
「ウソだウソだウソだーーーっ!」
それを見兼ねたジーナがミアを抱き抱える。
ミアがジッとジーナの目を見て訊く。
「お母さん、ウソだよね。お父さんは寝てるだけなんだよね?」
ジーナはただゆっくりと首を振り意思表示するのだった。
ミアはジーナの胸に顔を埋めて泣いた。
ニールが神妙な面持ちでジーナに近づき口を開く。
「ジーナさん、セトさんの最期の伝言を聞いたのは僕なんです。だから伝えさせて下さい…ジーナさんとミアに「すまない」…と」
「そう…この人らしい言葉ね…」
ずっと堪えていたジーナの目から涙が溢れ出る。
そしてセトの眠る棺桶に近づいた。
抱いていたミアを横に降ろし、膝をついてセトに語りかけた。
「わたしはあなたと一緒になって心の底から幸せだったと想っているわ。あなたも同じ気持ちだったなら嬉しいんだけど…もう訊けないわね…」
その時ミアは何もない空間に視線を向けていた。
ボーッと何かを見ているミアにジーナが気付く。
「どうしたのミア、何かが見えるの?」
「あのね。お父さんがね。笑顔でお母さんに「オレも幸せだったよ」って伝えてくれって言って消えちゃったの」
ジーナはミアをギュッと抱きしめた。
「ありがとう。ミア」
次の日、セトの葬儀が執り行われ狩人達は出席したが、シャナンと隊員達はジーナとミアに挨拶を済ませたあと、エルガ山へ魔物の探索に入った。
これは後からワッドがバロックに聞いた話だが、この日のシャナンは人が変わったように無茶をしながらも、一人で80匹近い魔物を掃討してしまったのだという。
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