ナーシャはミアの話しを聞いて、魔法の力ではなく、何か別の力がミアに備わっているという事だけは理解できた。
「…そう、何となく分かったわ。話しは変わるけど、決勝の相手は誰になったの?やっぱりあの少年?」
ミアは少し驚いた表情をして答える。
「そうです、あのフィンという少年が決勝の相手になりました。ナーシャさんから見てもやっぱりあの子が強そうに見えたんですか?」
「強いっていうか、不気味っていう表現が合ってるかも知れないわね。サカズキさんは強さが表に滲み出る感じだけど、あの少年は内に秘めた得体の知れない何かがあるように感じたわ」
ナーシャの話したフィンの印象は、ミアが感じている印象とほぼ同じであった。
「そう言えば準決勝で氷の剣技っていう魔法剣を使ってました。その技を連続して使われてサカズキさんは負けたんですよ」
「あの若さで魔法剣か…やはり恐ろしい素質を持ってるわね。私が魔法剣を使いこなせるようになったのは20歳くらいだった。それから考えれば凄いことよ」
ミアが真剣な顔になり話す。
「ナーシャさん、わたしは魔法の技ではあの子に負けてるかも知れないけれど、決勝戦は絶対勝って優勝します!」
「大丈夫、私は貴方が負けるなんてこれっぽっちも思ってないわ。なんと言ってもこの私に勝ったのだから貴方が負けるはずはない。応援してるわ、だから頑張って!」
「ありがとうございます!頑張りますね!」
ナーシャに励まされたミアは、フィンとの話しでモヤモヤした気分が晴れ、試合に集中するため控え室に行ったのだった。
休憩時間も終わって観戦客ら全員が元の席に座り、ミアとフィンの姿が闘技場に現れるのを今かいまかと待ち侘びている。
先に入場したのはフィンだった。
「ワーーーーーッ!」
観戦客らが堰を切ったように歓声を上げる。
続いてミアが入場すると。
フィンの入場した時よりも一際大きい声援が上がった。
同じ年齢だがミアは女性で人柄の良さもあって人気を集めていたのだろう。
それに大会最年少の二人による決勝戦は誰もが予想していなかったのだが、二人の試合をずっと観て来た観戦客らはこの決勝戦が楽しみで仕方なかったのだった。
観戦席の中央に王のための特別席が設けられている。その席に初めてアディア国王グラールと王妃リディアの姿があり、その両脇には剣聖七葉の統括長シャナン、副長ワイバード、ミアと面識のあるアーダインとデュバル、他のロスコット、ダイトラ、マーヴの面々が顔を揃えていたのだった。
コメント