セトの叫び声に反応してシャナンが咄嗟に真上を向くと、ボスガーゴイルが長剣を真っ直ぐ突き出し頭に届かんとする直前であった。
「ギィーン!」
ギリギリのところを銀の剣で受け流し同時に身をかわす。
攻撃をかわされたボスは上空へと退避し、素早く攻撃体制に切り替えようとする刹那。
「ゴスッ!」
シャナンが力の限り狙って投げた剣が超スピードで飛んで行き、石のように硬いボスの頭に突き刺さる。
ボスガーゴイルの翼は力を失い、引力に引により地面に叩きつけられて絶命した。
イヴァイと違い飛行する分だけ仕留め難かったが、残りのガーゴイルも全員が一丸となって掃討して行く。
今回は命中率の高かった狩人達の弓矢での活躍が大きい戦闘だった。
気の抜けない戦いが終わり、集中力を使い果たした全員がヘトヘトになっている。
それを見たシャナンがねぎらいの言葉をかけた。
「皆さんご苦労様です。ダリガ山に潜んでいたイヴァイとガーゴイルのボスを倒し、群れの掃討も出来ました。私の勘では残っている魔物は数匹です。その数匹もボスが死んだ事により、明日にはこの山から姿を消すと思われます」
話を聞いて全員が心から安堵していた。
「念の為1時間ほど探索したら山を降ります。あと一踏ん張りお願いしますね」
「はい!」
士気も上がり全員が力を振り絞って立ち上がった。
最後の1時間は空振りに終わったが、魔物がいないという確認が取れたのだからこれで正解である。
一行は麓を目指してタリガ山を降り始めていた。
横陣形は解かずに徒歩で麓の出発地点が見える距離まで辿り着く。
ここでセトがニールの異変に気付いた。
「ニール、足をどうかしたのか?」
歩き方が明らかにおかしかったのである。
「…実はガーゴイルとやり合ってる最中に足を挫いてたみたいで…少しだけそこで休ませて貰えないでしょうか?」
ニールの足は確かに腫れ上がっていた。ここまで何とか耐えていたのだろう。
「よし待ってろ、シャナン様に掛け合ってみるよ」
「ありがとうございますセトさん」
少し離れてしまったシャナンに駆け寄って申し出る。
「シャナン様すみません。ニールが足を挫いていて動けなくなったのです。少し休めば大丈夫と言ってますのでオレが付き添いますから先に行ってて貰えないでしょうか?」
シャナンは少し考えて答える。
「私達も残りましょう。何かあったら大変ですから」
「いえいえ、シャナン様達に迷惑は掛けられません。それにオレはこの山を熟知しています。大丈夫なんで先に行って下さい」
セトはシャナンの負担を増やしたくない気持ちが強かった。
「そうですか…分かりました。但し気を抜かないようお願いします」
「ありがとうございます。では」
シャナンは先へと歩を進め、セトはニールの休んでいる所まで引き返した。
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