建設業経理士1級 原価計算 試験対策 自己流まとめ ノ9

建設業経理士試験攻略 自己流!

工事契約会計における原価計算

適正な原価計算基準の意義と解釈

 工事契約会計基準において、収益認識の基準は、

 原則として工事進行基準であるという立場が強調され、

 その場合には、まずもって工事の結果(成果)が信頼

 をもって適切に見積る環境が整っていることが前提で

 あり、基準の実際の適用にあたっては、工事原価総額

 の見積りと毎会計期間における適正な工事原価の測定

 が不可欠となる。特に、決算日の工事進捗度の推定に

 ついては、ほとんどの実務において原価比例法を採用

 予想されており、また、例外的に他の工事進捗度の方

 法を採用したとしても、逐次の発生工事原価の計算の

 重要性はこれまで以上に高まってくると理解しておく

 必要がある。

 別言すれば、工事進行基準を適用しようとする企業に

 おいては、基本的に、常時継続的に一定の基準に適し

 た工事原価計算を進めていく体制が構築されていかな

 ければならない。

 

工事契約会計における原価計算の実践

(1) 工事進行基準・工事完成基準における原価計算上の相違

  工事契約会計において、工事進行基準を適用するかあるい

  は成果の現実性が認められないために工事完成基準を適用

  するかは、実践的には原価計算の在り方に影響を及ぼすも

  のである。

  企業においていかなる原価計算システムを構築するかは、

  原価計算の目的をどのように設定するかに関わる。すなわ

  ち、原価計算の目的は、原価計算基準のいうごとく、財務

  諸表作成目的、(契約)価格計算目的、原価管理目的、予

  算管理目的、基本計画設定目的等があり多様である。工事

  完成基準を採用する場合、常時継続的な工事原価計算につ

  いては、日常の原価管理・予算管理等の管理会計目的を大

  切にして、逐次に実行予算等の目標原価と実際発生原価を

  対比していくシステムを構築している企業もあれば、工事

  別の原価、決算における損益計算書(売上原価)と貸借対

  照表(未成工事支出金)の振り分けにのみ関心を向けてい

  る企業もある。

  これに対して、工事進行基準を適用しなければならない企

  業では、上場会社で四半期決算・中間決算を整えていかな

  ければならないかそうでないかの相違はあるにしても、内

  部統制組織と有機的に関係した原価計算制度を構築・維持

  していく必要がるあから、実質的に常時継続的に発生工事

  原価を適切に把握していくシステムを保有することになる。

  その意味において、工事進行基準では事実上、財務会計と

  管理会計のいずれかの目的をも達成することが可能な原価

  計算システムを維持していくこととなる。

  いずれにしても、工事完成基準では、工事原価の発生額は、

  工事の完成まで「未成工事支出金」の勘定に集計される。

  その間、非上場の会社においては、経営管理上の必要性と

  決算の確定を除けば特にその金額の妥当性を問うことはほ

  とんどないといってよい。工事竣工時に、完成工事高に対

  応する最終的な完成工事原価が妥当もしくは適正であれば

  よいと考えることともなる。おのずと、工事進捗過程で工

  事原価計算を厳格に実施しようとする意欲は薄らいだもの

  とならざるをえない。

  これに対して、工事進行基準を適用し、しかも工事進捗度

  の計算に原価比例法を採用するとなれば、工事の進捗と共

  に逐次、工事原価の実際発生額は的確に把握していかなけ

  ればならない。もちろん、収益の認識は決算日(四半期等

  を含む意味の期末)で実施すればよいわけであるから、期

  末での発生工事原価の妥当性にのみ注意を向けていくとい

  うことで工事進行基準を適用することは可能であるが、中

  間決算や四半期決算情報の開示を求められる上場会社の会

  計制度に鑑み、また、非上場会社であっても厳しい月次会

  計情報管理を実施していくことが望ましいとされる状況に

  おいて、工事進捗過程の関連情報を尊重する工事進捗基準

  の適用がより理想的な形態であるといえよう。したがって、

  工事進行基準の適用にあたっては、月次で適正な工事原価

  計算をすすめていく方式を念頭に置いておくことが肝要で

  ある。

(2) 工事進捗度の計算手法の選択との関係

  工事契約会計において工事進行基準を適用する場合、請負

  工事の成果の確実性が認められることが肝要であり、その

  実践には、工事収益総額、工事原価総額、決算日における

  工事進捗度の3要素について信頼性をもって見積ることが

  必要となる。

  発注者との契約と直接的に関わる工事収益総額は別として、

  工事原価総額も工事進捗度の計算における期間発生工事原

  価も、いずれも企業がどのような工事原価計算システムを

  構築しているかと重要な関係を有する。工事進捗度の測定

  には、理論的には次の2つの考え方があるとされている。

 a.インプット法

  請負建設工事に経営資源を投入した事実に着目して、その

  実績と当該工事総量(見積工事総原価など)とを比較して、

  これをベースに工事進捗度を決定する方法である。具体的

  なインプット法には、工事に投入した実際工事原価、材料

  費、労務費、労務作業時間、重機械運転時間などのデータ

  を使用するのものであるとされているが、本格的な建設工

  事においてインプット法を適用する場合には、実際工事原

  価を基礎とした工事進捗度が測定されるべきで、他の基準

  は、それと実質的に同等の比率を算定できる特定のケース

  に限らる。インプット法は、インプットの大きさ(金額や

  時間等)と建設生産物の形成過程との間に一定の相関関係

  があることを前提としている。

 b.アウトプット法

  請負工事の施工によって達成された成果実績と当該工事総

  量(請負工事総距離など)とを比較して、これをベースに

  工事進捗度を決定する方法である。具体的なアウトプット

  法には、建設距離数、建設ユニット数、係数化した工種数

  、技術的進捗評価ポイントなどがある。工事進行基準は元

  来、請負工事の進行過程において実質的な出来高(あるい

  は出来形)を測定して、これを工事収益率(収益計上の割

  合)とする考え方に基づくものであるから、原則的にはア

  ウトプット法が適していると考えられる。しかしながら、

  現状においては、建設工事に普遍的な信頼性の高いアウト

  プット法は、確立されていない。

  我が国において、工事進行基準を適用する場合に理論的な

  アプトプット法の確立が望まれるが、関係する内部統制組

  織や適正な基準の運用に対する意識が未成熟な実務の現状

  においては、一般的にインプット法における実際発生工事

  原価を基準とした工事進行基準の計算方式すなわち「原価

  比例法」が多用されることとなろう。

  原価比例法とは、建設工事の発生原価を適切な方法によっ

  て計算し、これをもって工事の進行割合(工事進捗度)の

  基準とする方法である。原価比例法による工事進捗度の計

  算とは、次の算式によって計算される方法である。

  

  工事進捗度=当該工事の発生工事原価総額

       ÷当該工事の見積り工事原価総額

  これは、国際会計基準およびわが国の法人税法において最

  も一般的な方法として例示されているもので、請負工事に

  関係する企業においては、原則として個別原価計算を採用

  しているから、最も馴染みが深くかつ適用可能性の高い方

  法である。ここにおいて、分母は実行予算を基礎とする事

  前原価計算であり、分子は、期間の事後(発生)原価計算

  を意味するものであり、この有機的な結合が適切な工事進

  捗度を測定することとなる。

  

  

  

 

 

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