建設工事原価計算の基礎概念
建設業の経営活動と原価計算制度
経営活動
組織目的を合理的に達成する活動
原価計算制度
「財務諸表の作成」「原価管理」「予算統制」などの
目的が達成されるための計算秩序
原価計算期間と原価計算単位
原価計算期間
日本の原価計算実務では、経営管理目的の観点から
1カ月とする企業が多い
原価計算単位
一般的原価計算単位
個数・枚数・kg(キログラム)・m(メートル)など
部門の提供するサービス単位
kw(キロワット)・時間など
他に使われる単位
作業日数・機械や車両の運転時間など
工事原価計算の基本的流れ
費目別原価計算→部門別原価計算→工事別原価計算
工事原価の費目別計算
費目別計算の意義
発生した原価要素を適切な費目として把握して
一定期間において分類集計する手続き。
財務会計機構の重要な重要な要素であり、
実際原価計算における第1次の計算段階としての意味をもつ。
現場と管理部門で発生した原価を暫定的に把握する特定の項目を、
原価計算上は「費目」と呼ぶ。
よって原価が第1次的に測定されるのは費目別計算となる。
材料(材料貯蔵品)に関する計算
材料(材料貯蔵品)=経営の目的とする生産物の製造及び販売の
ために外部から購入した物品
材料費=工事のために直接購入した素材、半製品、製品
材料貯蔵品勘定等から振り替えられた材料費
(仮設材料の消耗額等を含む)
材料の購入に関する処理
購入時資産処理法
材料の購入の都度、一定の方式によって購入原価を決定し、
材料在庫として貯蔵し、消費の際に振り替える方法。
原価計算上正式な方法であるがこの場合には受払記録が必要
購入時材料処理法
材料の受払記録を省略し、材料の購入時に全て消費される
という前提で材料費処理または未成工事支出金処理する方法。
この場合は残存材料の評価が必要で、工事終了後にこの
評価額が材料勘定に振り替えられる。
材料の購入原価=材料主費 + 材料副費
材料主費=材料の購入代価。送り状価額から値引きや
割戻しなどの額を控除したもの。
ただし、割引額は通常は営業外収益として
処理されるから、購入代価から控除しない。
材料副費=材料の購入から消費に至るまでの作業に
付随する費用で外部副費と内部副費とがある。
外部副費=買入手数料、引取運賃、保険料、関税など
内部副費=購入事務、検収、選別、整理、手入れ、保管など
副費を材料の購入代価に算入する場合の方法
直課法
購入材料代価に直接賦課する方法
配賦法
適切な基準によって関係材料に配賦する方法
○実際配賦法=実際値(実費)を配賦する
購入原価の算定を遅らせる欠点がある
○予定配賦法=予定配賦率を使用する
迅速なばかりでなく、副費の正常的な配賦に役立つ
副費予定配賦率
=一定期間の寺領副費発生予定額
÷同上期間の配賦基準数値総計
(予定購入代価、予定購入量など)
材料費の計算
材料費は物品の消費によって生ずる原価であり、
通常は各種の材料別に原価計算期間における実際消費量に
その消費価額(実際単価あるいは予定単価)を乗じて計算する。
消費量の計算
○継続記録法=材料の種類別に口座を設けた帳簿により、
その受払を記録し帳簿上での消費量と残量を確認する方法。
消耗、盗難等の減量分を把握しないから、
実地棚卸で補完していく必要がある。
○棚卸計算法=期首繰越量と期中受入量を記録しておき、
実地調査による期末棚卸量から期中の払出量を
逆算する方法。
ただし、正常な消費量とその他の消耗量とを区別
できない欠点がある。
○逆計算法=一定の作業によって発生する標準消費量を
予め定めておき、実際の成果から逆に消費量を
決定する方法。
建設業ではできるだけ使用しない方が良い
消費価額の計算
個別法、先入先出法(買入順法)、移動平均法、総平均法など
仮設材料の処理
社内損料計算方式
予め当該材料等の使用による損耗分等の各工事負担分を
使用日数当たりについて予定しておき、後日、差異の
調整をする。
すくい出し方式
他の構造・仕上げ用材料に準じて、工事の用に供した時点に
おいて、その取得価額の全額を
原価処理(材料費あるいは仮設材料費)し、
仮に工事完了時において何らかの資産価値を有する場合に
その評価額を当該工事原価から控除する。
労務に関する計算
労務費の定義
工事に従事した直接雇用の作業員に対する資金、給料及び手当等。
工種・工程別等の工事の完成を約する契約でその大部分が労務費
であるものは、労務費に含めることができる。
(労務外注費)
労務費のうち、工種・工程別等の工事の完成を約する契約で
その大部分が労務費であるものに基づく支払額
外注費に関する計算
外注費の定義
工種・工程別等の工事について素材、半製品、製品等を作業
とともに提供し、これを完成することを約する契約に基づく
支払額。ただし、労務費に含めたものを除く。
経費に関する計算
経費とは、材料費、労務費、外注費といった原価の特性を
付与して区分した区分した原価要素に所属させることのな
かったその他のすべての費用である
経費の定義(国土交通省告示)
完成工事について発生し、又は負担すべき材料費、
労務費および外注費以外の費用で、動力用水光熱費、
機械等経費、設計費、労務管理費、租税公課、
地代家賃、保険料、従業員給料手当、退職金、
法定福利費、福利厚生費、事務用品費、通信交通費
交際費、補償費、雑費、出張所等経費配賦額等のもの
経費の測定方法
支払経費
支払の事実に基づいてその発生額を測定する費目をいう。
支払の事実=領収書、納品書、請求書などの証憑書類
月割経費
1事業年度あるいは1年といった比較的長い期間の全体について
その発生額が測定される場合には、これを通常の原価計算期間
である1カ月に割り当てなければならない経費。
測定経費
原価計算期間における消費額を備え付けの計器類によって
測定し、それを基礎にしてその期間の経費額を決定するも
のをいう。
発生経費
原価計算期間中の発生額をもってしか、その消費分を
測定できないものをいう。
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