刀姫in 世直し道中ひざくりげ 仙女覚醒編 ノ104~106「覚えのある」「語り手の戯れ」「神禅塔」

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 仙女覚醒編

 などと隊長の夜倶盧がナルシスト云々話しはさておき。

 亜孔雀が退魔の鎧を鎖で巻いた理由は云わずもがな、悪魔が素肌で触れようものならたちまちどうなるのやら。

 無言で無言でそっぽを向き、立ち去ろうとする亜孔雀であった。が、これでは格好がつかぬとばかりに夜倶盧が「そっぽ」の方へ立ち塞がりせを取り出す。

「おっとっと!君ね~、分かってないないなぁ。絶世の美男子を前にガン無視は良くない。うん、ちっとも良くないよぉ。神が与えもうた折角の出会いだ。是非ともこの素晴らしい仙器の威力を味わってもらえないものかねぇ?」

「ん?その武器はもしや…」

「ふ~ん、君は何か知っている風だねぇ。昨日さぁ、二人の老仙人が何者かに殺されてしまったんだけれど、ひょっとして関係のある人だったりするのかなぁ?」

 夜倶盧が取り出したる仙器、それは亡き者となった老仙人の怒涛混府刹那(どとうこんふせつな)が所有していた天祥棍であった。

 亜孔雀は府刹那と短時間に一戦交えただけだが、天祥棍による強烈な打撃を受け腕を破壊された経験から、天祥棍の姿形や威力は身に染みて覚えている。
 ゆえに、目の前に出された天祥棍を見て僅かながら動揺したものであるけれど、何が可笑しいのか不気味な笑みを浮かべたのだった。

 物語を進めたいのは山々なのだけれど、ここまで登場した数種の仙器と呼ばれれる仙人達の武具について語らせていただこう。

 などと突拍子も無く云い出したものの、果たして何処から語れば良いものか…
 寝不足かつ焼酎に含まれるアルコールが回りに回った頭では上手く語る自信は零に等しいのだけれど…

「ヒック!………..ヒック!?」

 おっと!?あろうことか仙器の歴史などを語るどころかしゃっくりまで発生する始末。

 ならばならばこうなれば…

 そもそもしゃっくりとは医学用語で『吃逆(きつぎゃく)』と呼ばれ、肺の下に位置する横隔膜の痙攣によって起こるらしく、横隔膜の痙攣に連動して声帯の筋肉が収縮し、狭くなった声帯を急激に吐く息が通るために一定間隔で「ヒック」と発音する現象らしい…

 この憎き「しゃっくり」は自分の身体の一部が意図しないところで動き、コントロールして止めることも出来ないわけだから、ある意味「身体の暴走」と云っても良いくらいだ。

 しゃっくりを止めたい時は、「息を深く吸い込む」のと「息をゆっくり吐き出す」というやり方が効果的だと世間一般でよく聴くけれど、私、語り手の場合かつて幾度となく試したが上手くいったことなど一つもない。
 大抵というか、99%の確率で忘れた頃にいつの間にか治っていた、というのが経験談となる。

 物語を脱線させた上、思わず脱線の上塗りを試みる語り手の私は早く眠りたいのだけれど、突如襲来したしゃっくりの治る気配は無いし、そのお陰様で目は冴えて来るしでまだまだ眠れそうにない…

 しか〜し、「明日に備えて眠るべし」なので心地よいベッドの上で横になり、可能であれば目を閉じ瞑想でもしていようと思うのでありんす…

 

 どうでも良い戯れはほどほどにして、「仙器」について少しだけ話しておこう。

 仙人専用の武器、略して「仙器」と呼ばれているわけだが、これは人間の世界でいうところの何処かの鍛冶屋が汗水流して刀を造る、という努力を重ねた人造的な物では無い。

 どちらかと云えば、物質を具現化する魔法の如き力によって造られる物なのである…

 ちょっと唐突になってしまうが、仙人界の地表は全世界の地上面積の千分の一くらいの広さである。人によっては百分の一と聞いて狭く感じるかも知れないけれど、全世界の面積は1億3612万7000平方km、日本の国土面積は約37万8000平方km、世界の面積のなかで日本の 占 し める 割合 わりあい はたったの0.28%らしい。と考えれば、仙人界全体の面積はざっと日本国土の三分の一も面積があることになるわけだ。

 仙人界の全人口に比し、意外にも広い仙人界の一角には、仙人達が時として修練の場として利用する「仙厳岳(せんげんだけ)」という山岳が存在しており、その仙厳岳の奥地に「神禅塔(しんぜんとう)」と呼ばれる神聖な半建造物が厳かに建っている。

 この厳かに佇む神禅塔の最上階が、屋根無しの屋上となり、そこに仙器を必要とする仙人と、「神の使い」とされる高尚な仙人の二人が揃えば仙器を産み出す条件が整ったことになる…

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