究極の魔女はダンジョン系セラピスト「朝食の準備」

究極の魔女はダンジョン系セラピスト

 食事が終わりカミュが後片付けまで済ますと、マリムが二階の部屋へ案内する。


「ここを使っていいわ。あ、因みに二階の他の部屋は出入り禁止だから」


「出入り禁止ですね。了解です!」


 ランプに火を灯して部屋を眺めると、ベッドと箪笥が一つずつ置いてあるだけで後は何も無かったが、今のカミュにとってはこれで十分だった。


「明日は特別に君のパーティメンバーにピッタリの子を紹介してあげる。今日は疲れてるだろうからもう寝ても構わないわよ」


 実際のところ、疲れ切った身体に満腹感で満たされたカミュは、出来るものなら今日は早く寝たいと思っていた。


「何から何まで本当にありがとうございます。お言葉に甘えて今日はもう寝させてもらいます。おやすみなさいマリムさん」


「フフ、感謝されるのは慣れてるけど、君のは客の感謝とは少し違う気がするわ。おやすみ」


 こうしてマリムとカミュの長い一日が終わった。


「ふぁ~!よく眠れたわぁ」


 翌朝、マリムはいつもの時間にいつものように起きると、寝間着から仕事用の黒いドレスに着替える。


「あの子はしっかりやってくれてるかしら…」

 13歳の少年に家事を任せたものの、心配していたマリムがそう呟き、一階のキッチンへ行って覗くと。
 朝食をテキパキと作っているカミュの姿があった。


「カミュ、おはよう」


「おはようございます!マリムさん!もうすぐ朝食の準備ができますから、もう少しだけ待って下さい!」


 朝から元気なカミュは、早起きして出入り禁止と言われた部屋以外の掃除を済ませ、朝食の準備をしていたのだった。


「しっかりやってくれてるようね。私の見込み違いじゃなくてホッとしたわ」


「マリムさん心配してたんですか…でも本当に大丈夫ですよ。家事なら任せてください!」


 そこへ黒猫姿のレコがやって来る。


「カミュのお陰でボクの家事仕事が減って助かるよ」

「あら、レコにはその分私の仕事を手伝ってもらうのよ。だから楽になるなんて思わないでね」


「ええ!?猫も結構忙しいんだけどな…」


 特に忙しく無かったのだけれど、言うだけ言ってみたレコであった。 朝食を食べながらマリムがカミュに話す。


「お金を貸してあげるから午前中にレコと二人で買い物に行きなさい。私服やダンジョンで使用する装備を買ってくるといいわ」


 「お金を貸す」という言葉に、マリムの金銭に関するシビアさが窺えた。

「はい!ありがとうございます。レコもよろしく!」


「カミュのためにボクの知ってるお店を教えてあげるよ」


 仕事やプライベートでも余り外に出ないマリムより、毎日のように外へ出歩くレコの方がジオマールの町に詳しいのである。

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