炎の剣は一振りごとに「ゴオッ!」と音を立てて炎が上がり、氷の剣も同じく一振りごとに氷が「ピキン!」と音を立てて拡散する。
炎の剣と氷の剣のぶつかり合いは、魔法剣対魔法剣の総力戦という様相を呈していた。
この迫力ある闘いを観ていた観戦客にも変化が起こる。
普通の生活を送る一般人は魔法を目にすることが少なく、二人の留まることの無い魔法剣の攻防に驚嘆し、声援を送っていた者達も黙って観戦に集中していたのだった。
選手の控え席で観戦しいていたサカズキが呟く。
「こりゃ、あの少年と再戦しても勝てる気が全然しねえな」
すると後ろの方から女性の声が聴こえて来た。
「貴方ほどの戦士でもそう思う事があるのですね」
サカズキが後ろを振り向くと、そこには医療班の女性に肩を借りて控え席に向かうナーシャの姿があった。
医療班の女性に支えられながら隣の席に座るナーシャにサカズキが訊く。
「お前、最後はあんなにやられたのに…動いても大丈夫なのか?」
身体の痛みを堪え、無理やり笑みを作り出したナーシャが答える。
「もちろん、まだ身体を動かす度に激痛が走る状態です。でも、無理して足を運んだ甲斐があったわ。こんな凄い試合を見逃さなくて済んだのですから…」
サカズキとナーシャの二人は並んで試合の観戦に集中した。
「氷の剣技!フローズンフォグ!」
フィンが叫ぶと、突き出した剣先から大量の氷の粒が放出されミアの身体を覆う!
「え!?」
「ピィキーン!」
ミアが一瞬にして氷の山に閉じ込められた!
「おお~~~…」
動き続けていた二人の闘いが突如として静止し、観戦席から驚きの声が上がる。
静かになった試合場だったがすぐにまた動き出す。
「ビキキキィキキィッ!」
凍らされたミアの身体を基点として、氷の山にヒビ割れ一気に広がった。
「パッリィーン!」
ミアが氷の山を飛び出し叫ぶ!
「炎のよ!焼き尽くせ!」
「!?」
左腕から放たれた特大の火球があっという間にフィンを包み込んだ!
立て続けにミアが叫ぶ!
「火球よ!爆ぜろ!」
「バックゥン!」
特大の火球が凄まじい爆発を起こし、爆風が闘技場全体に「ビュオッ!」と吹き荒れた。
「おわっ!?嬢ちゃんやりすぎなんじゃねえか!?」
サカズキが爆風を近くで受け椅子から倒れそうになった。
爆発後の煙が晴れると、フィンがうつ伏せで床に倒れている。
装着している皮の鎧はボロボロに焼け焦げ、手足がピクピクと痙攣していた。
観戦客の誰もが「決着した」と思う状況に見え、審判員もフィンの意識を確認しようと近づいたその時!
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