カミュはマリムから10万ギラを受け取り、レコと一緒に家を出て買い物に出掛けた。
レコは人間の姿になりカミュと並んで大通りを歩く。
「最初はボクが良く利用する店を紹介するよ。マリムの行きつけの店の服は高級で手が出ないからね」
「僕は服にこだわりが無いからどんな安物でもいいよ」
レコが少し笑いながら言う。
「あんなボロボロで汚れた服で町を歩けるくらいだからねぇ」
「僕の母が生きている時に言ってたんだ。
「服が高価で綺麗な物にこだわるのも良いけど、それより自分の心の綺麗さにこだわってくれると嬉しい」って」
「ふ~ん、君のお母さんはきっと心の綺麗な人だったんだろうねぇ」
「ああ、僕はそんな母が大好きだったよ」
などと会話しているといつの間にか目的の服店に着いた。
カミュは店内の服を一通り見ると、同じ柄の服と下着を各3着ずつ購入する。
それを見たレコが不思議そうな顔をして訊く。
「服にこだわらないのは分かるけれど、なんで全部同じ服を買っちゃったの?」
「気に入った同じ服を何着も持っていれば、毎日着る服を悩む無駄な時間が無くなって効率的だからだよ」
「…そんなものかなぁ?」
「服にこだわりを持ってて、着る服を選ぶのが楽しいって人にとっては無駄な時間じゃないんだろけどね」
店を出た二人はまた大通りを歩き出した。
「ダンジョンで使用する装備を売ってる店は、利用したことが無いけど場所を知ってるんだ。武器屋と防具屋があるけどどっちから行く?」
「装備は僕も今まで買ったことが無いし、良く分からないから近い方からでいいよ」
「了解、近い方は防具屋だな。ほら、あそこにあるよ」
レコがそう言うと二人で防具屋に入って行く。
防具屋には若いヒューマンの女性メアリが店員をしている。
彼女の背丈は160cmくらいで茶色の髪に黒い瞳をしており、オレンジ色の服に白のエプロン姿で顔は素朴な感じをしていた。
「本日はどのような防具をご希望でしょうか?」
突然メアリに訊かれたカミュが慌てて適当に答える。
「あの、僕は冒険初心者なので、一番安くて動き易い防具はありませんか?」
メアリがニコッと笑ってカミュを誘導する。
「ではこちらにある皮の鎧がお勧めですよ。大抵の冒険初心者はこの皮の鎧を購入してダンジョンに挑みますので」
「んと、じゃあ、これにします。おいくらですか?」
「こちらは3万ギラになります」
値段を訊いたカミュは少し驚いた。
服と下着は全部で1万ギラにも満たず、皮の鎧の価格は一着でその3倍以上もしたからである。
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