皮の鎧が魔法の光に包まれ身体にフィットするまで縮まった。
初めて魔法を見たカミュが驚きの表情を浮かべている。
「これでOKでしょ。お代は1,000ギラにまけておくわ」
「本当にそれだけで良いんですか?ありがとうございますマリムさん!」
防具屋でサイズを合わせた特注の鎧にするには、2万ギラかかると言われていたカミュは、破格の提案にまた驚いたのだった。
二人を見ていたレコが小さいな声で呟く。
「マリムがそんな低額でやってくれるなんて、雨でも降るんじゃないかな…」
呟きを聞き逃さなかったマリムがレコを軽く睨む。
「私だってこんな少年からお金をむしり取るほど鬼じゃないわよ」
「へ~」
レコは白けたような顔をした。
カミュが二階の部屋へ皮の鎧を戻し、キッチンに戻り三人で昼食を始める。
「あ、そうそう。午後一で君のパーティになってくれる人を紹介するから」
「その人ってどんな人なんですか?」
自分の初めてのパーティになる人物、気にならない方がおかしいだろう。
「それは会ってからのお楽しみということで」
マリムはウインクして勿体ぶった。
昼食が終わり、カミュとレコの二人で後片付けをしていると。
「チャリリーン!」
玄関の外にある呼び出しベルを鳴らす音が聴こえた。
「はーい!お待ちください!」
レコが応じて、手に持っていた皿をテーブルに置き玄関へ向かう。
玄関のドアを開けると一人の杖を持った少女が立っていた。
「いらっしゃいませ。今日はどのようなご用件でしょうか?」
「あ、あのマリムさんに呼ばれて来たリーア・シェルックと言います」
あとから玄関に来たマリムがリーアに声をかける。
「リーアいらっしゃい。遠慮はいらないわ、中に入ってちょうだい。レコはカミュを仕事部屋に来るように云って」
マリムはそう言ってリーアと一緒に仕事部屋へ入って行った。
程なくカミュが二人の待つ仕事部屋に現れ、リーアに気づき軽く会釈する。
リーアの歳の頃はカミュより2,3歳上だろうか、薄い茶髪で幼く可愛らしい顔をしていた。
マリムが二人に向けて話す。
「カミュ、彼女は1カ月前に冒険者登録をした魔法を使える冒険者よ。リーア、彼は昨日冒険者登録をしたばかりの超新米冒険者なの。これから二人はパーティを組んでダンジョンに挑むのよ」
カミュとリーアの二人が互いを見て目が合う。
「あ、あのカミュ・ローグハートと言います!これからよろしくお願いします!」
「リーア・シェルックです。こちらこそよろしくお願いします」
二人は顔を赤くして照れながら握手をする。
これから二人のダンジョンへの挑戦が始まり、マリムがダンジョン系セラピストとして彼らを見守って行く。
こうして奇想天外な物語が紡がれるのであった。
第一章 完。
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