転んだら異世界統一の刑だった!~元暗殺者の国盗り物語~ 25~27話

転んだら異世界統一の刑だった!~元暗殺者の国盗り物語~

[師匠の本気]


 師匠との激しい体術の攻防が続く。


 俺は暗殺者の訓練で空手道、合気道、柔道、キックボクシングなどの様々な格闘技を習得していた。
 そのため体術において技の数や連携では遥かに師匠を凌いでいる。
 繰り出す攻め手を次々と変化させて師匠を追い詰め、余裕の無くった顔の師匠の隙を見つけて首の布に手を伸ばす!


「土遁!土柱(つちばしら)の術!」


 師匠の忍術で地面から土が柱となって現れかわされてしまった。


「ほ~、今のはやばかったわい。お主と普通に体術で渡り合うのは無理っぽいのう」


「お褒めに預かり光栄ですが、忍術も捨てたもんじゃ無いですよっ!」

「シュシュッ!」


 避けられるのは目に見えている手裏剣を2発!


「雷遁!大蛇雷(だいじゃらい)の術!」


 投げた手裏剣を狙って忍術を放つ。
 手裏剣と俺の両手が雷で繋がり雷の鞭が完成した。

 今度はその雷の鞭で師匠を攻める。


「そんな忍術は教えておらんぞ!」


 師匠が見たことの無い忍術に驚いていた。

「でしょうとも!これは俺とシャーリで考えた忍術なんですよ!」


 何度かかわされたが遂に師匠の背中に一撃を加える!


「ヴァリリッ!」


「ぐぉおっ!?」


 ダメージに寄る叫び声を上げて師匠が初めて地面に膝を着けた。


「どうです師匠!そろそろその首の布を渡して貰えませんか?」


 俺は師匠の老体を気遣って言ったのだが完全に逆効果だった。

 これで師匠に火が着いてしまう。


「弟子が舐めた事を言ってくれるわい。ようやくわしの血が騒ぎ出して来たぞ。「神の迅雷」と呼ばれた由縁の術を見せてやろう」


 師匠はこれが俺の免許皆伝試験である事を忘れ本気で来るようだ。


「雷遁!雷神憑依の術!」


「ヴァリヴァリヴァリーーーッ!」


 晴れ晴れとした天から突如として凄まじい雷が師匠に落ちる。
 その雷が消滅せずに師匠の身体に纏わりつき、正に雷神のような姿となった。


「弟子よ!こうなったら甘くは無いぞ!覚悟しろ!」


「ヴン!」


 音を残して師匠が消えた!?


「ドン!」

「がっ!?」


 姿が見えたのと同時に俺はみぞおちへ一撃を入れられていた!
 身体が宙に浮くほどの威力。


「ヴン!」


 師匠の移動する音!?


「ドン!ドドン!」

「ぶっ!?」


 宙に浮いた俺の身体の更に上から腹部へ連続攻撃を叩き込まれ、背中から地面に叩きつけられた。
 タフな俺の身体もこれには流石に悲鳴を上げる。
 直ぐに体制を整える事はできず、何とか片膝を着く形に持って行ったところへ師匠が言う。


「弟子よ。いい加減本気を出せ。このままでは死んでしまうぞ」

[九字印]

 そっか、御老体を気遣った戦い方をしているのはバレバレですか…
 それに師匠は現役を退いていたとはいえ、俺の予想を遥かに超える強さだった。
 俺は両膝の土を払いながら立ち上がって九字印を結ぶ。


「臨、兵、闘、者、皆、陣、烈、在、前!チャクラ開放!」

「ボッ!」


 初めてチャクラを生み出した時のように、体内からチャクラが溢れ身体を包む。


「じゃあ一瞬でケリをつけちゃいますけど、あとで泣かないでくださいね」

「なに!?」


「雷遁!雷閃光(らいせんこう)の術!」

「ヒュッ!」


 俺は瞬間移動したかのような速さで師匠の横を通り過ぎ、手には黒い布を握りしめていた。


「これで忍者のこれで試験は合格ですね」


 師匠は何が起こったのか分からないといった顔で俺を見て言う。

「み、見事だ」


 ロロアさんが試験終了を告げる。


「黒布の奪取成功により忍者免許皆伝試験はこれにて終了とする!」


 試験が終わったところで、上で観ていたシャーリが下へ降りて来た。

「レオンやったね!後半は何が起こってるのか分からなかったけど凄かったよ〜!」


「ハハ、ありがとうシャーリ」


 雷神憑依を解いた師匠が歩いて近寄り懐から何かを取り出した。


「我が弟子レオンよ、これは忍者免許皆伝証だ。お主が忍者であることの証明になる大切にするんだぞ」


 和紙のように丈夫な紙で作られた証明書を受け取り、俺は深々と頭を下げる。


「ありがとうございます。師匠の弟子として恥じぬよう精進いたします」


「有言実行。本当に3ヶ月で忍者になれましたね!おめでとうございます!」

 ロロアさんが笑顔で祝いの言葉をかけてくれた。

 その夜は忍者になった祝いと、俺とシャーリの送別会を兼ねて宴会が行われた。

 宴会には家のご近所さんも含めて20人以上が集まった。
 シャーリはこの3ヶ月で魔法と錬金術を駆使し、ご近所さんの手伝いや悩みなどを解決してちょっとした人気者になっていたのである。


「シャーリちゃんが居なくなると寂しくなるねぇ」


 などとおじさんやおばさんに旅立つことを惜しまれていた。
 俺は隣に座る師匠に質問を投げかける。

「師匠、ハンゾウに挑戦するための条件として忍者である事の他にも条件があるのでしょうか?」


 だいぶ酒が入って赤くなった師匠が答える。

「そうだのう。訊いた話では1億ギラの献上が必要のようだぞ」


「い、1億ギラ!?」


 挑戦権を買い取るようなものだろうが高すぎる…


「そんな顔をするな、お前はわしの愛弟子だ。1億ギラくらいわしが貸してやるわい。ただし、出世払いの倍返しで頼むぞ。ホホホ」


 倍返しは冗談だろうが、俺は3倍返ししても良い気持ちになっていた。

[ハンゾウへの挑戦状]

 俺とシャーリはみんなに見送られ、翌日の朝から忍者の町白露を出発した。
 目指すは忍びの国絶影(ぜつえい)の城下町青玉(せいぎょく)。

 と言っても魔法の絨毯で一っ飛びで昼過ぎには到着。
 城下町青玉は規模で言えば白露の4倍ほどの広さがあった。様々な種類の建造物が建ち並び、道も舗装されていて壮観な町並みをしていた。


「忍びの国は一番小さい国って訊いてたけど、この町だけ見ればそうは思えないな」


 そんな感想を言うとシャーリが話す。

「でもそれ間違ってないよ。この世界に13ある国の中で忍びの国の領土が一番狭いし、城下町に関してはハンゾウが他の町に比べて異常なほど力を入れてるらしいからねぇ」


 シャーリはずっと森の中で暮らしていた割に驚くほど世界の事を知っていて見識もある。


「シャーリ、取り敢えず腹ごしらえしてから絶影城に乗り込もう」

「それ賛成!腹が減っては戦もできないらしいからね!」


 暫く歩くと飲食店がちらほら見え出し、シャーリが食べてみたいと言うのでそば屋に入った。
 メニューを見ると前世にあったそば屋のメニューのまんまと言える内容。
 スタンダードにかけそばを2つ注文し、程なく若い女性の店員さんが運んでテーブルに置いた。  腹が減っている俺とシャーリは夢中になって食べた。


「初めて食べたけどそばって美味しんだね〜!」

「ん、期待してた以上にこの世界のそばは美味い!」


 などと普通にそばを食べた。
 訳ではなく、しっかり女性店員からハンゾウについての情報も仕入れてある。
 ハンゾウはこの城下町ではかなり崇拝されているらしく、ハンゾウ陛下と呼ばれていた。
 外出する事は少なく、ほとんど絶影城の中に引きこもり、何をしているのかは謎のようである。
 結論を言うと謎だらけの人物のようだ。
 そばを堪能したあと絶影城に向かい今は門前に居る。
 門は全開となっていたが両端に人が立っていて、頭を下げて普通に通ろうとして呼び止められた。


「お前達、この城に何用で来たんだ?」


 ここはストレートに言うべきか?それとももっともらしい嘘を吐くか?
 俺はストレートに言うことを選択した。


「ハンゾウ陛下に挑戦状を叩きつけに来ました」


 声を掛掛けた男が絶句する。
 代わりにもう一人の男に尋ねられた。

「お前が陛下に決闘を申し込むとでも言うのか?」


「そうですよ。もう通っても良いですか?それか、ハンゾウ陛下に取り次いでもらえると助かりますけど」


 絶句していた男が回復して言う。


「少しの間そこで待っておけ」

 そう言って門の中へ入って居なくなる。
 暫く待ちぼうけをする羽目になったが、さっきの男が一人の老人を連れてやって来た。

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