倒れているミアにナーシャがゆっくり歩いて近づいていく。
ミアの受けたダメージは相当なものであったが意識はどうにか保っていた。
だが身体を直ぐに起こせる力が出ない。
そんな状態のミアの頭の中に直接話し掛けてくる声が聴こえた。
「ミア、自分の中にある世界樹の力を今こそ解放するのです。あなたは特別な子なのですよ」
「…世界樹の力…解放…特別な子…」
ミアが頭の中に聴こえた言葉を呟くと、体内の中心に暖かく力強い何かが現れるのを感じた。
「ボウッ!」
その何かが体内から溢れ一瞬にして身体を包み込む。
そしてミアはゆっくりと立ち上がった。
ナーシャが予想もしていなかったその現象を見て歩みを止める。
「この子は…」
「だあっ!」
ミアが気合の声を上げてたじろぐナーシャに突っ込んだ!
「ドン!」
「ぐぅっ!?」
渾身の拳による一撃が風の防御を退けナーシャの腹部に直撃し数メートル吹き飛ばされる!
だがナーシャは床に叩きつけられる直前に風の力で態勢を立て直す。
ミアはその間、床に刺さった自分の剣を引き抜きすでに攻撃態勢に入っていた。
互いが詰め寄り接近して剣の攻防が始まった。
「キィン!キィン!キィン!」
先ほどと違いミアの攻撃が風の防御を突破して届いく!
「ヴァキィン!」
「!?」
遂にナーシャの剣を叩き折った!
「ドドドドドドン!」
直後に自分の剣を放り投げ、ナーシャの身体に拳で数発の連撃を放った!
「ふーーー」
攻撃を終えたミアが息を整える。
ナーシャは立ったまま動かない、否、立ったまま気絶していた。
それを確認した審判員が勝者の名を告げる。
「準決勝第一試合勝者ミア!」
「ワーーーーーッ!」
観戦席から今大会一番の歓声が湧き上がる。
控えていた医療班がナーシャを担架で運び出し、別の医療班の一人がミアの治療に当たろうと駆け寄って来た。
医療班の女性がナーシャに斬られたミアの胸の傷を見て驚く。
「信じられない…もう傷口が塞がってる」
ミアの身体には傷跡があるだけで血は一滴も流れていなかったのである。
「わたし、小さい頃から良くケガをしたけどいつも直ぐに治っちゃうんです」
「そ、そうなのね。取り敢えず大事に至らなくて良かった」
ナーシャを戦闘不能にしたのはミアだったが、心配して医療班の女性に訊く。
「それよりナーシャさんの方は大丈夫ですか?」
「彼女の命に別状はなさそうよ。それに数人で回復魔法をかけているから、数十分もすれば意識を取り戻すと思うわ」
「そうですか、本当に良かったです!ありがとうございます!」
医療班の女性は嬉しそうなミアの顔を見て、先ほどまで死闘を繰り広げていた少女と同一人物だとはとても思えなかったのであった。
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