世界樹とハネモノ少女  「山賊」

世界樹とハネモノ少女

 アディア城への道のりは長い。

 ペタリドから到着までに二つの町を経由するのだが、ミアの考えでは両方の町で一泊ずつ、2泊3日で到着する予定だった。

 ペタリドを出てから半日は進んだろうか。

 目に飛び込んでくる景色は全てが新鮮でミアは感動すら覚えていた。

 休憩するのに丁度良い木陰を見つけてバセマラを休ませ水をやり、ニールのくれたラゼムの燻製をレクルと一緒に食べる。

「レクル!この燻製、お母さんのと同じくらい美味しい!」

「ニールさんと奥さんに感謝だね」

 一人と一匹は食べながら周りを眺めていた。

「世界って広いね〜ぇ。アディア王国だけでも相当の広さだけど、この星には他にも10以上の国があるんだって」

「ふ〜ん、小動物のボクらには想像もつかないけど」

 実際、アリヒュールには13の国がある。

 全ての国が平和であれば問題無いのだが、現在でも戦争が絶えない。

 アディア王国も隣国であるルザーム共和国と、今度こそ戦争になるともっぱらの噂だった。

「あの山を越えた先がトーラムよ」

 ミア達は食事を終え、最初に一泊する予定の町トーラムの方向を確かめてまた進み出す。


 越えて行かなければならない山の名はロズ。

 エルガ山の半分に満たない高さだが、森の険しさはエルガ山以上で山賊が出るとの噂もある山だった。

 山に入り1時間ほど進んでいると、耳の良いレクルが何かに気付く。

「あっちの方向から人の声が聞こえる」

「了解、行ってみよう」

 ミアはバセマラに掛かるロープを木に縛り付け、声が聞こえるという方向ヘ音を消しつつ徒歩で向かった。「あそこね。わたしにも声が聞こえるわ」

「何だかやばそうな雰囲気だよ」

 更に近付くと10人程の集団に3人の家族らしき人達が囲まれているのが分かった。

「だからその荷物を置いて行けばそれで逃してやると言ってるんだ」

「駄目だ!金は良いがこの荷物の中身には多くの人の命が掛かっている」

「てめえ!いい加減にしろ!」

 押し問答を繰り返していたようだが、山賊の長らしき男が痺れを切らしそうである。

「ミア、やばいよ殺されるかも」

 レクルがミアの方を見て話したが、ミアの姿はそこには無かった。

 既に山賊の集団へ向かい走り出していたのである。

「へぶっ!?」

 一番手前にいた山賊の一人が鞘を着けたままの剣で首を叩かれ一瞬で気絶する。

 二人目を気絶させたところで山賊達がようやくミアの存在に気付いた。

「な、なんだ!?あの娘は!?」

 近くに居た山賊二人がミア目掛けて斧を振りかぶったが、手の甲を素早く叩かれて斧を落とし、脚元に回転蹴りを受けて二人とも倒れる。

 その位置から山賊長らしき男に突っ込み、持っていた斧を叩いて吹き飛ばし、鞘から銀の剣を素早く取り出し首に向け突き立て寸止めした。

 ミアが山賊達に咆える。

「山賊ども!この人の命が惜しければ全員武器を捨てなさい!」

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