シャナンとの会合が終わり、ワッドが狩人達に魔物対峙への参加希望者を募る。
狩人は勇気のある者が多く、ワッドとセトを含めた10人が夕方には集まった。
夜の内にシャナンの部隊と親睦を深める目的も兼ねて、明日の掃討作戦の打ち合わせを酒場で飲みながら行うようになっている。
場所は町に3軒ある酒場の中で一番人気の「バッガロ」。中は他の店に比べて広かったが、流石に合計20人ともなると、店の半分を貸し切る事となった。
テーブルと椅子を集め20人全員が席に着く。
シャナンが飲食会(打合せ)を進行する。
「 皆さん集まって頂きありがとうございます。何も考えず、まずは食って飲みましょう!」
狩人達は少し驚いていた。
会議室で見たシャナンとここに居るシャナンの雰囲気が違い過ぎたからである。
今のシャナンからは毅然とした人格者の面影は微塵も見えず、普通の遊び盛りで元気な20歳の青年にしか見えなかった。
心配になりワッドが隣りの隊員に尋ねる。
「つかぬ事を訊くが、あのお方は剣聖シャナン様で間違い無いよな?」
訊かれた隊員は少し笑って話す。
「ああ間違いない。あの人は剣聖シャナン様だよ。会議室での雰囲気とのギャップに驚いたんだな?」
「そんなところだ。間違いが無ければそれで良い」
「初めて見る人は皆揃って驚くよ。シャナン様は公務の時とプライベートの時とのONとOFがかけ離れ過ぎなんだ」
20歳という若さでアディア王国の最強組織に抜擢された逸材にも、人間らしい部分がある事を知ったワッドはある意味安心していた。
飲食を1時間ほど楽しみ和気藹々となった頃に、シャナンの表情が公務の時のソレになった。
「皆さん、酔い潰れる方が出る前に明日の話をします」
さっきまで陽気に楽しんでいた隊員はもちろん、狩人達まで瞬時にビシッとなりシャナンの方を向く。
「明日はダリガ山に全員で入ります。隊員2人と狩人の方々2人に組んで頂き4人編成を1パーティとして計5パーティになり、麓で一直線に200mずつの距離を取って横に並び、同じ速度で山を登って行きます」
シャナンも結構な量の酒を飲んでいた筈だが、口調はしっかりしていて覇気をみなぎらせている。
「各パーティは魔物と遭遇した場合、即座に笛を吹いて他のパーティに知らせて下さい。笛を聴いたパーティは動ける状態であれば応援に移動する事。但し、遭遇した魔物が一匹であれば統率者は別としてそのパーティだけで対処して下さい」
一通り伝え終わったのかシャナンの表情が和らぐ。
「では皆さん、明日があるのであと1時間だけ楽しみましょう!」
きっちり1時間飲食と会話を楽しんだ隊員と狩人達は、明日のために解散したのであった。
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