手刀により出来たミアの胸部の傷が徐々に塞がり出血が止まって行く。
床に倒れたままのフィンの身体はピクリとも動かない。
審判員が近付きフィンの様子を確認して告げた。
「フィンの気絶による戦闘続行不能を確認した。よって、この試合の勝者をミアとする!」
「ドッワーーーーーーッ!!!」
静かになっていた観戦席からドッと歓声が湧き起こる。
「やっと終わったぁ…」
流石に疲れ切った様子のミアが安堵の表情を浮かべた。
フィンの周りには医療班が集まり回復に当たっている。
ミアが歓声の鳴り止まないなか、試合場を出て控え席に歩くと。
「やったわねミア!」
控え席に座り観戦していたナーシャに声を掛けられた。
「ナーシャさん!観てくれてたんですね!?嬉しい!」
ミアが喜びナーシャも微笑む。
「途中からだけどね。でも本当に凄い試合だったわ」
「嬢ちゃん優勝おめでとう。おっと、オレと話すのは初めてだったな!?サカズキだ」
ナーシャの隣に座っていたサカズキがミアに話し掛け握手を求める。
「サカズキさん、ミアです。ありがとうございます」
ニコっと笑みを浮かべて握手を交わした。
「準決勝でミアに救われたお礼が未だだった。あの時は助かったよ。ありがとう」
握手をしながらサカズキがお礼を言って頭を下げた。
少し顔を赤くしたミアが照れている。
「あいつのやり方が好きじゃ無かっただけです。気にしないで下さい」
三人が話しているところへシャナンが歩いて来た。
それに気付いたナーシャとサカズキが首を垂れる。
真剣な表情をしていたシャナンが顔を崩し笑顔でミアに話し掛けた。
「ミア、優勝おめでとう。最初から最後まで目の離せない展開で見事な試合だったよ!」
「お兄ちゃんありがとう!っと!」
シャナンの顔を見たミアが喜びの余り抱きつこうとして咄嗟に止めた。
ミアにしては珍しく、それなりの地位にあるシャナンのことを気遣ったのである。
「?。15分くらいしたら国王による表彰式が行われる。短い時間だけどゆっくりしてくれ。じゃあ俺はこれで失礼するよ」
シャナンはそう言ってその場を早々と立ち去った。
二人のやり取りを観ていたナーシャとサカズキが驚いた顔をしている。
興味津々な顔のナーシャが訊く。
「もしかしてミアはシャナン様と兄妹なの?」
「あ、いえいえ!本当の兄妹では無いですよ!小さい頃にわたしの生まれ育ったペタリドの町で出逢って、それからは兄のような存在になったんです」
「そうなのね。あの人は私達のような剣士にとっては雲の上の存在だからびっくりしたわ」
「ふ〜ん、そうなんですねぇ」
ミアはシャナンを兄のように慕う気持ちはあったが、地位的な意味でのシャナンに特に何も感じていなかった。
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