ミアが試合場を出て出場者の待機席へ向かうと、フィンが「パチパチ」と手を叩きにこやかな顔で立っていた。
「決勝進出おめでとう!いやあ素晴らしい試合を観させてもらったよ」
褒められたのにも関わらずミアの表情は曇る。
「あなたに褒められてもあまり嬉しくないけど、礼儀として言っておくわ。ありがとう」
フィンがため息をついて言う。
「そんなに嫌わなくても良いんじゃないかなぁ?…ん、まあいいや。決勝ではお手柔らかに」
「まだあなたとの対戦は決まってないわよ」
「それは大丈夫。サカズキさんは強いけど負ける気がしないよ。じゃあね」
そう言ってフィンは試合場へ向かった。
「あの野郎、若いのにかなりの自信家だな。世の中の厳しさってやつを教えてやるか」
サカズキが近くにいて聴こえていたのか、ニヤッとしながら試合場へ向かう。
激戦を終えて疲れていたミアだったが、決勝戦で闘う者がどちらになるのか気になり観戦することにした。
試合場にはフィンとサカズキが向かい合い、観戦席から声援が飛んでいた。
審判員がいつものように試合開始を告げる。
「用意!」
サカズキが両手では無く右手だけで大剣を持ち前方に構える。
フィンは一回戦とは違い双剣を前方にクロスして構えた。
「始め!」
フィンが軽やかに駆け出し先制攻撃を仕掛ける!
「すぐに終わらせてあげますよ!サカズキさん!」
前方に向かって跳躍し双剣を振りかぶって突っ込む。
「波―――っ!」
対するサカズキが手を広げた左腕をフィンに向け叫びながら突き出す!
「ドン!」
「つっ!?」
目に見えない衝撃波をもろに受けたフィンが後ろに吹き飛ばされた!
回転して上手く着地したがダメージがあるのか片足を床に着く。
サカズキが高らかに笑いながら言う。
「はっはっはっ!油断してまともに気功波を喰らった気分はどうだ?」
フィンが睨むような目つきをして返す。
「…少し身体が痺れてますよ。あなたは気功術が使えるんですね。でもアディアの国には無い武術のはずですが?」
「ほう、気功術を知っているのか。これは他国で修行して会得した武術なんだよっと!」
まだ完全に痺れのとれていないフィンにサカズキが大剣で斬りかかる!
「ガァツン!」
転がって避けられた凄まじい剣撃が床を裂き砕く!
剣撃を避けたフィンを大剣が再び襲う!
「ガァキィン!」
右ひざを地に着けた体勢で双剣をクロスさせてなんとか大剣を受け止めた。
「ギリギリギリ」
サカズキが大剣を両手で持ち押し込もう力を入れる。
観戦客らは、序盤からの思わぬ展開に固唾を呑んで観ていた。
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