「ギィン!」
ジャスカが上から振り下ろされる攻撃を左手の鎌で受け止め、すかさず右手に分銅を握り脇腹を狙って攻撃する。
「ガンッ!」
それに反応したナーシャが小型の鉄の盾で防いだ。
間合いを取ろうとバックステップするジャスカだったが、ナーシャは間合いを広げる事を許さないかのように連撃を放つ。
開始早々目の離せない展開に観戦客らは息をのんだ。
この試合は他の出場者も観戦することが可能で、もちろんミアも闘技場の端にある席に座り観戦していた。
ナーシャの連撃は休むことなく続き、ジャスカの身体には数カ所の切り傷が現れ始めていた。
観戦客らが「このまま一気に決着がついてしまうのでは?」と思い始める。
しかしそうはならなかった。
剣撃を鎌で受け止め続けていたのだが、僅かに大振りになった一撃を「止める」では無く受け流したのである。
加える力の方向を突然変えられたナーシャが態勢を崩した!
自らが意識して作った機会をジャスカが逃す筈もなく、態勢を崩したナーシャの腰に横から蹴りを入れる。
「ぐっ!?」
ナーシャは蹴られた方向へ数歩歩かされた。
咄嗟に振り向き態勢を整えたが、既に自分に優位な距離を取ったジャスカが分銅を「ブンブン」と回し攻撃態勢に入っていた。
「散々切り刻んで貰ったが今度はこっちの番だぜっ!」
「ブン!」
伸びた鎖が横からナーシャを絡めとろうと襲う!
下手に受ければ鎖が絡まり相手の思う壺である。
「はっ!」
襲ってくる鎖が身体に届く直前に上へ跳んでかわした!
だが宙に浮いたところへ回転した鎖が再び襲ってくる!
選択肢が無くなり盾で受けるも鎖が絡まり、ジャスカの強い力で引っ張られると盾はナーシャの手から離れてしまった。
最初の劣勢から完全に優位に立ったジャスカに観戦客が湧き上がる。
元々この男は魔物退治を生業としている集団ディブルの団長という事もあり、民衆に親しまれ人気もあった。
「盾を失って戦力半減だな。ここで降参した方が良いんじゃないか?」
「まるで勝利を確信したかのような口振りですね」
「まあ状況を見ればおのずとそうなるんじゃないか?」
ジャスカの表情には余裕すら感じられた。
「…いいでしょう。今から直ぐにその顔を青ざめさせて差し上げます」
そう言うとナーシャはこの試合一番の真剣な眼差しをする。
「風よ吹け」
そう呟き剣を回転させると剣の周りに極小の竜巻が発生した。
「風の剣技!風斬りっ!」
叫ぶと同時に離れたジャスカに向け剣を縦に振り下ろす!
「ビュッ!」
矢の飛ぶような音を立て三日月の形をした風の刃が放たれた!
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