僕達の世界線は永遠に変わらない [猫の誓い]

僕達の世界線は永遠に変わらない

 猫ではあったが覚醒猫のチャラは察しが良いらしく、聞き手の三人が真剣に話を聞き真剣に何かを考えてくれていることを理解していた。

「当然その三羽のカラスどもは八つ裂きにしてやったけどね。それだけじゃばあちゃんの弔いには全然足りない。オレはこの住宅地のカラスを完全に根絶やしにするとばあちゃんに誓いを立てている。それをばあちゃんが願っているはずはないけど、そうでもしないとオレの気が収まらないんだよ」

 匡と結月はカラスに人が殺される場面に遭遇したことがまだない。
 そんな二人に対して、飛鳥井は住宅街を何度か探索して人が命を奪われる場面に遭遇していたし、助けられなかった悔しさも経験している。
 チャラの想いは彼に十分すぎるほど伝わっていた。

「チャラは良い奴だな…話を聞いて良かったよ。よし!前より俄然やる気が出て来た!匡!結月!チャラ!俺に掴まってくれ!南のカラス部隊を蹴散らしに行くぞ!」

 飛鳥井は極端にクールな面とホットな面の両方を併せ持つ人間である。
 今はホットな面に火が付いたのか、その表情と口調からやる気がみなぎっているのは誰の目にも明らかだった。

 そのみなぎるやる気が二人と一匹にも伝導し、飛鳥井の背後から匡が右肩、結月が左肩に掴まる。

「僕も戦いたくてウズウズして来ました!」

「同じくわたしも!」

 最後に飛鳥井の右足をカプッと甘噛みしたチャラが言う。

「たぁふぉもぉふぃなふぁふぁだぁ」

 何を言っているのかさっぱりわからない。

「……うん、甘噛みしてたらそうなるわな。まぁいいや、行っちゃうよ~♪」

「ヴン!」

 三人と一匹はその場から一瞬にして消え去った。

 飛鳥井が移動手段としては最も優れている瞬間移動を2回使い、10秒も掛からずに住宅街南側の目的地へ着く。

 三人と一匹が着いた目的地は住宅街の出入り口付近に在るスーパーの屋上。

「オッケーオッケー♪敵は予想通りの位置を探索しているな…….」

 腰に下げていた双眼鏡で遠くを飛び回るカラスの群れを観察する飛鳥井。

「指揮を執ってるのはあのデブで大きなカラスで間違いなさそうだ…さて、今回はどうやって奴らを片付けてやるか…」

 飛鳥井の見立てはまごうことなき正解である。
 体長は他の化け物カラスよりやや高い程度、しかし、その姿は何処からどう見ても圧倒的に肥満体であり、腹部の横幅も3m近くあるものだから目立って仕方がない。
 まるで黒く巨大なゴムボールを連想させるその者の名は、カラス軍幹部四人衆が一人?「肥満のディク」であった。

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