僕達の世界線は永遠に変わらない [成長期]

僕達の世界線は永遠に変わらない

 匡が意を決したような表情で遠慮がちに提言する。

「飛鳥井さん。交戦する前に僕の考えを聞いて欲しいんだけど…」

「おっ!?なんだ言ってみて」

「さっきの戦闘ではチャラが幹部を先行して倒してくれたからかなり楽に戦えたと思う。だから今回も先に幹部から叩けばいいんじゃないかと…」

 先程の戦闘において単独で突っ込んで来たカラス軍幹部のリーベは、名乗る間もなくチャラに粉砕され、あとは飛鳥井の作戦が功を奏し予想に反してあっさりと決着した。

「うん、だよな♪俺もちょうどそれを考えていたとこだ。幹部を倒せば圧倒的優位に立てる!さっきみたいに俺との連携やってみるかい?」

「是非!やったるぞーっ!」

 覚醒以前の高校生だった阿笠匡(あがさたすく)は元々気が強い方ではあったが、未だかつてケンカをするなどの暴力的行為とは全く持って無縁な少年である。

 そんな彼が覚醒で得た己の力の理解を徐々に深め、さらにチャラの悲しい物語を聞いたあとから多少顔が引き締まり男らしさが増して、今は戦闘がしたくてウズウズしているようにさえ見えた。

 やはり環境が人格を形成するという理論は正しいのかも知れない。

 特に彼と結月はメンバーの中でも成長期真っ只中の年齢である。
 今後は他の者より急成長し、強くて立派な大人になることだろう…このとんでもなく変化してしまった世界で生き残れれば…

 「幹部の位置は大体把握してあるから、いきなり飛んでって奴らにサプライズをプレゼントしてやろう。んじゃぁ…結月ちゃんとチャラはここで待ってて、俺と匡の二人でチャチャっと幹部を倒してくる!」

 不満を隠そうともしないチャラが言う。

「駄目だ!待たない!オレも一緒に行って大暴れしたい!」

「えっ!?チャラが行っちゃうならわたしも~っ!大丈夫大丈夫!自分の身は自分で守りま~す!」

 流石の飛鳥井も、結月とチャラがついて行くことは想定していなかったらしく微かに動揺する。
 
「き、君たちもかぁ……分かった。その代わり、移動した瞬間に結月はバリアを張って身を守ること。ん~っと、チャラは幹部以外を好きに攻撃して暴れてくれて良し!だけど匡の前方へは絶対行っちゃダメだ。彼の攻撃は危険度がMAXだからね」

「オッケ~♪」

「ニャー」

 結月が嬉しそうに、チャラは何故か猫の鳴き声で応えた。

「じゃあ、匡はさっきカラス達を一掃した態勢で準備っと。結月ちゃんとチャラは適当なところに掴まってくれ。中間地点で敵の正確な位置を確認するから一回刻んで移動する。だから君達が動くのは二回目の瞬間移動後だ。よろしく!」

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