飛鳥井が匡の背後から左肩に左手を乗せ、飛鳥井の背後から右肩に結月が手を乗せて、チャラが左足首をまたもや甘噛みする。
「…チャラ。甘噛みはもうやめてくれないかな?気が抜けて集中できないんだよね」
「ひゃふはふえ」
飛鳥井の極々当たり前な注文に甘噛みをやめずチャラが答えるも、噛んだままなので何を言っているのか分からない。
「…ふぅ~、猫の年齢で俺と一緒くらいだと云うなら少しは大人になって欲しいとこだけど、ま、今はいいや。みんな、跳ぶぞ!」
「ヴン!」
最後はチャラの態度にやや諦めながらも、飛鳥井は気を取り直して瞬間移動を実行した。
「ヴン!」
前言通りカラスの群れとの距離を半分くらい一気に縮めて2階建ての家屋の屋根上に出現する三人と一匹。
飛鳥井が即座に双眼鏡を取り出し、見る限り検討外れな場所を探索するカラス達の中に、名も知らないが目立ってしょうがない肥満体の幹部ディクの正確な位置を確認する。
「おし、匡。次はあのデブカラスの真ん前に跳ぶよ。心の準備は良いね」
「バッチリ!一撃必中で行きますよ」
匡の勢いを感じる返答に飛鳥井がニンマリする。
「それは頼もしいねぇ。おっと、言い忘れるところだった。結月にチャラ!あの幹部のデブカラスは屋根上でぼ~っと立ってる。あの屋根上に移動するから直ぐに散ってくれ。幹部には絶対に手を出さず雑魚のカラス達を倒すんだ。それと決して離れ過ぎないように!んじゃ集中!行くぞ!」
結月とチャラが返事をする前に飛鳥井は瞬間移動の態勢?をとった。
そしていよいよ敵軍の懐に飛び込む奇襲をかける。
「ヴン!」
「ヴン!」
狙い通り瞬間移動は成功し、ディクの3mという至近距離に姿を現した三人と一匹。
「チャラ行くわよ!」
「オッケー」
結月とチャラのコンビがまるで示し合わせていたかのように俊敏に動き、匡と飛鳥井の背後方面の化け物カラスの居る場所へ駆ける。
一秒遅れで柴門もその場から姿を消した。
「カァッ!!?なんだ貴様ら何処から現れた!!?」
鳩ならぬカラスのディクが豆鉄砲を食らったかのように目を丸くして驚く。
「何処から来たって質問には答えねぇ!意味がないからな!てめぇは今ここで消えるんだ!」
柴門を彷彿とさせるような口調と勢いに乗った匡が拳を振りかぶる!
「カァッ!?最強ディフェンスマーーーックス!!!」
ディクがさも慌てて防御態勢に入った!
彼の能力は身を守るバリアを身体に纏わりつかせた攻撃を避ける必要のない絶対防御。例えるなら、防弾ガラス10枚を重ね合わせたものより強固な防御技である。
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