「カッカッカッ。人間如きの攻撃など効くわけが無いだろう。貴様の能力は気になるが、まぁいい、どの道死ぬのだ。何も問題はあるまい」
カラスの王という狭義の王ではあるが、その実力と相まって、有り余るほど王者の風格を備えたカラハグ。
「あ、悪いねぇカラスの王様~。そこはあんたの思い通りにはいかないと思うよ~。という事で一旦退かせてもらいま~す」
「ヴン!」
「!?」
言い終わるや否や、飛鳥井は美琴を抱き寄せたまま瞬間移動でカラハグの前から姿を消した。
カラス王は突然目の前から消えてしまった飛鳥井が猛スピードで移動しているのではないかと辺りを見回し、姿も気配無いことを悟って後ろを振り返り、倒れて死にかけている筈の柴門の方へ目を向ける。
50mほど離れたその場所には、葵のヒーリングにより回復して立ちあがろうとする柴門と、瞬間移動した飛鳥井と美琴を合わせて四人の集まる姿あった。
「カッカッカッ。これはこれは実におもしろい。人間もまだまだ奥が深いものだな」
してやられたとは思っているのだろうけれど、カラハグに焦燥する様子などは微塵も感じられない。
いつでも飛鳥井らを仕留められるという揺るぎない自信があるのであろう…
死にかけていた柴門が生気を取り戻した顔で冗談めかすように悪態をつく。
「飛鳥井てめぇ。遅かったじゃねぇかよ」
「いや~すまんすまん。これでも全力で駆けつけたんだ。こっから活躍するんで許してくれ」
「飛鳥井君、美琴は大丈夫なの?」
美琴がぐったりしているのを見て心配そうな顔で葵が訊いた。
「ああ、彼女は力を使い果たして意識を失っているだけだ。安心して良いよ」
この短時間で3回も意識を失うというのは人間の身体に負担があるのは間違い無いだろうが、状況が状況だけに致し方ないところである。
「それより、二人とも俺の肩に早く手を乗っけてくれないか。じゃないと直ぐに全滅しちまうぞ」
「ん?」
「えっ?」
現状が緊急事態であるかのような物言いに二人が不思議がり、飛鳥井の目線の先を追う。
「げっ!?」
「うわっ!?」
葵と柴門がほぼ同時に驚いた。
何故なら、居る真上上空には数百羽の化け物カラスが集まり、既に百を超える群れが地上に固まって立つ四人を襲わんと急降下していたのだ!
慌てて二人が飛鳥井の両肩にそれぞれ手を乗せる!
「じゃあ行っくよ~!」
「ヴン!」
四人纏めて姿を消したその場所へ急降下していた化け物カラスの群れは標的が突然ロストして「?」となり、各々が翼を広げて地上に着地したのだった。
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