「へぇ、カラスの小さい脳味噌でよく考えたもんだ…」
相手への賞賛も多少含めていたであろうけれど、皮肉を込めた言い方で柴門が呟いた。
追い討ちの攻撃を仕掛けることが出来なかった原因は敵の降らせた羽根にある。
何故なら柴門の周囲360度と頭上には、黒く大きな羽根がフワリフワリゆっくり時間をかけて上空から落ちており、直線的な攻撃を生み出す彼のボマー能力を発動できずに封じ込められた形となってしまった。
仮にこの状況で技を放ったとしても、敵へ向け手から一直線に飛ぶ光球が羽根に触れた瞬間に起爆し、目的を達成できないまま消え去ってしまうことだろう。
「どうだ!こうなってしまってはお前の力も半減だな!能力無しの肉弾戦ならオレ様の勝ちは100%確定だっ!」
カラスと言えど痛覚はあるはずである。しかし、血を流し痛みが走る身体でキガイは戦闘態勢をとった!
「100%ってのはちと言い過ぎだぜ!窮地で発揮する火事場のクソ力を見せてやらぁ!」
確かに体格とパワーでは圧倒的な差があるかも知れないが、あくまでも強気な柴門が攻撃に備え身構える。
「軟弱な人間にしてはいい心構えだ!では死ねっ!」
「ダッ!」
4mを優に超える巨体がその見た目に反し速いスピードで移動した!
しかもここで柴門は愕然とすることになる。
確実に自分を仕留めるものと思い込んでいたキガイが攻撃を仕掛けたのは、二人による戦闘から目を離すことはなかったものの完全に油断をしていた八神だったからだ。
「八神さん!やべぇ逃げろっ!!」
柴門が敵の意図に気付き叫んだが、既にキガイは八神に手が届く距離まで近づきつつあった!
「隙を窺っていたのは分かっている!気を散ってしょうがない。まずは目障りなお前から死ねっ!」
「なっ!?アッ、アイロンシールドッ!?」
襲い来る巨大な拳を前にギリギリ反応した八神が咄嗟に鉄の盾を生成する!
「ガァッゴーーーーーーーン!!!」
「ぅがぁっ!?」
目の前に突如と現れた鉄の盾に振り下ろした拳を臆することなくそのままぶつけ、鉄の盾ごと八神を強引に吹き飛ばした!
「ダン!ズザザザザーーーッ!」
吹き飛ばされた八神の身体が受け身をとることもなく、まるで人形のように道路へ投げ出されてしまった。
「八神さん!大丈夫かっ!?」
倒れる八神の元へ必死に駆け寄った柴門が声をかけるがぐったりしていて返事がない。
「まさかっ!?」
ピクリとも動かない八神を心配し、慌てて無意識に自分の耳を鼻へ近づけ呼吸を確認をする…
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