「このままバラバラで奴らを探しても拉致があかぬかも知れぬ。良いか。今より我が軍団を均等に5つの部隊に編成する。貴様ら四人は各部隊の指揮を執ってくれ」
カラハグは「四羽」では無く「四人」という言葉を使う。覚醒して人間の言語を理解し、話せるようになった知力から考えれば別段不思議なことでは無いだろうが…
四人?のカラスはカラハグから命名されており、呼痩せノッポの「キガイ」、筋肉質な巨漢の「ヴォルガ」、肥満体の「ディク」、メスでグラマラスな体型の「リーベ」と呼ばれていた。
「我が一部隊を引き連れ住宅街の中央を探す。キガイは北、ヴォルガは東、ディクは南、リーベは西と分かれあの人間どもを探すのだ。では行くがよい!」
「「「「はっ!」」」」
カラス王が右手を突き上げ振り下ろすと、四人がコウベを垂れ呼応して命令に従い飛び去る。
そして、およそ一つの部隊が200羽で編成された各部隊が、飛鳥井らの探索に乗り出したのだった。
遠方のため当然話し声や細かい部分は分からずとも、その様子を双眼鏡で眺め敵の大まかな意図を読んだ飛鳥井が呟く。
「どうやら五つの部隊に分かれて俺達を探す作戦に切り替えたようだな…相手の動きが俺達にとって吉と出るか、はたまた凶出るか…作戦次第、か」
カラス達の予想外の動きに、考えていた作戦を改めなければならない。
飛鳥井が屋根の上であぐらを掻いて座り込み、脳内のニューロンとシナプスをフル稼働し敵を撃破する作戦を練り出す。
その間に他のメンバーである五人と一匹も屋根上に集まった。
既に敵軍は動き出し、時間的余裕はさほど無い。
石のように動かず試行錯誤していた飛鳥井が、指示を待ち後ろに並び立つメンバーの方を振り返る。
「おっ、みんな揃ってるね~。作戦を話す前に一つ確認なんだけど、新しい仲間のチャラはどれほど戦えるんだい?」
練り出した作戦の実行に二つの部隊を編成しようという考えがあった飛鳥井が、不明なチャラの戦闘力を確認するために訊いた。
一匹だけうつ伏せ状態で眠そうにしているチャラがめんどくさそうに答える。
「フゥァ~。基本的な強さだけで言えばお前より強いかもよ」
あからさまに舐めた態度のチャラの言葉に飛鳥井の顔が微妙に引き攣る。
人間相手にはイライラすることなど皆無の彼だったが、動物に対しては何か違う感覚があるのかも知れない。
「ほ、ほう。それは大した自信で何よりだ」
半信半疑の表情の飛鳥井に匡が告げる。
「チャラが数羽の化け物カラスを一瞬で蹴散らすところを僕は見ました。飛鳥井さん、こいつの強さは半端ないですよ」
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