屋根の上でうつ伏せの状態で双眼鏡を覗き込み、遠方を飛び回るカラス軍の様子を探っている柴門に、家屋の外に出た匡が下の庭から声をかける。
「柴門さーん!お疲れ様です!あの~、飛鳥井さんが作戦会議をするからシェルターに来て欲しいってことなんですけど」
「…………」
匡の声に気づいている紫門だったが、双眼鏡を覗き込んだまま沈黙している。
「柴門さん!飛鳥井さんが呼んでますよーーーっ!
声が小さくて聞こえなかったのか?と思った匡が声を更に大きくして呼びかけた。
やはり双眼鏡を固定したままの状態から動かない柴門が返す。
「でっかい声を出すな聞こえてるよ!それより作戦会議は無意味かも知れねぇ。どうもカラスどもの様子がおかしい…匡!悪いが飛鳥井にシェルターの奴ら全員此処に来るように伝えてくれ!」
「わ、わかりました!」
柴門のあまり余裕が無い話し方から緊急事態であることを察した匡は、返事をして急いでシェルターへ出戻る。
程なくして誰よりも早く瞬間移動で屋根にやって来た飛鳥井がうつ伏せの柴門の背後から訊く。
「柴門。カラスの奴らに動きでもあったのかい?」
「…ああ、もはやあいつらを烏合の衆だと舐めてかからない方が良いかもだぜ。見てみろよ」
そう言って柴門が飛鳥井に双眼鏡を手渡し、受け取った飛鳥井が柴門の横にうつ伏せになって並び双眼鏡を覗き込む。
双眼鏡から見えた遠方のカラスの群れは、今までと明らかに違う行動を取っていた。
暫く観察して飛鳥井が呟く。
「カラスに群れが五つの集団に分かれた…まさか、あいつら編隊を組んでるのか?」
「たぶんな。カラス王カラハグ以外に指揮を取れる奴がいるんだろうよ」
〈5分ほど前のカラス軍〉
「クゥアーーーッ!!」
目の前から消えた飛鳥井達を千羽ほどの化け物カラスが躍起になって探すも見つからず、現状を打破しようと考えたカラス王のカラハグが咆哮をあげた。
すると空中に単独で待機しているカラハグの周りに、四羽の化け物カラスが飛んで来た。
驚くことに集まった四羽の化け物カラスがその姿を変形させていく。
それぞれがカラハグと同じように人間の体型へと変化したのだが、痩せノッポ、筋肉質な巨漢、肥満体、中にはメスのカラスでグラマラスな体型という個性が顕著に表れていた。
この四羽のカラスは覚醒による影響が強かったのか、他の者達より特別優れており、その実力は圧倒的戦闘力を誇るカラス王に届かずとも、恐るべき力を秘めていたのだった。
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