「…んじゃまぁ、三人とも俺につかまって」
額に自らの血をタラタラと垂らし、微妙にブスッとしながら三人を促して、八神、匡、結月がそれぞれ黙ったまま飛鳥井に触れる。
「シェルターに行ったら葵さんに回復してもらおう…せーい」
「ヴン!」
やる気を感じられない声を出して瞬間移動を発動させた。
「ヴン!」
「わぁっ!?」
「きゃっ!?」
忽ちシェルターへ移動すると、丁度葵と美琴の真正面に四人と一匹が現れたため、二人が引きながら驚く。
「よ、四人とも無事に戻れたようね。でも相変わらず瞬間移動で急に現れると驚いちゃうわぁ、心臓に悪いったらありゃしない…ところで、飛鳥井君はその猛獣に襲われてる真っ最中なのかしら?」
チャラに頭を甘噛みされたままの飛鳥井を見て、半分本気で半分冗談めかしながら葵が訊いた。
「ああ、こいつはチャラと云う俺達の新しいペットだ」
「ニャグ!」
「ぐぉっ!?」
チャラには余り冗談が通じないらしく、また機嫌を損ねたチャラの顎に力が込められ飛鳥井の鮮血が宙へほとばしった。
「もぉ!ギブギブギブギブ~!誰かこの猫ちゃんを俺から離してくれ!」
もはや甘噛みとは言い難い痛みに耐えきれず助けを求める。
「チャラ~!ちょっとやり過ぎよ。いい加減その人を許してあげて」
現状、この中では一番チャラと親しくなれている結月が巨大猫の喉を右手で撫でながらご機嫌を取り、飛鳥井から引き離そうと試みた。
「ニャ」
「良い子ねぇチャラ♪」
「ニャ~♪」
作戦が功を奏し、ようやくチャラが彼の頭から口を離して猫撫で声を上げ結月に擦り寄った。
血が流れすぎたのか、青ざめた顔をして飛鳥井が葵に頭の治癒を求める。
「葵さんお疲れのところごめん。ヒーリングをたのんます」
「ふぅ、これでも美琴の回復で疲れてるんだからね!つまらない遊びで怪我なんかしないでよ。もう!」
そう言いながらも、優しい葵はすぐさま飛鳥井にヒーリング能力を発動させ、チャラの甘噛みと本気噛みで出来た傷の治癒を始めたのだった。
「匡、屋根の上で見張りをしてる柴門を此処へ連れた来てくれないか?全員集まったところで作戦会議を開きたいんだ」
「上ですね。了解です!」
飛鳥井に指示を受けた匡は素直に云うことを聞き入れ、駆け足でシェルターを出て柴門のいる場所へ向かった。
「そう言えば葵さん。美琴の回復は上手くいったのかな?」
椅子に座る飛鳥井の背後から治癒をしている葵を上目遣いで見る。
「もちのろ~んよ♪わたしの能力はグレードアップして精神の回復まで出来るようになったんだから♪」
そう答えた葵の声と表情は非常に明るかった。
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