「でも飛鳥井君の方は大丈夫なの?ほら、能力の使いすぎで倒れちゃうとか」
ナインスセンスという能力は無限に使用でない事は各自が経験済みである。だからこそ瞬間移動の多用を危惧する葵は心配して訊いた。
「大丈夫大丈夫!俺の能力は覚醒したあと毎日頻繁に使ってるから熟練するのが早いんだよね。だから心配御無用ってわけさ。んじゃ、俺は三人を探しに行ってくる」
「ヴン!」
飛鳥井は葵に余裕の表情でそう答え、二人に目配せするとほぼ同時にシェルター内から外へ瞬間移動した。
「飛鳥井の野郎、チームのリーダーが板について来たな…」
「そうねぇ。最初はキャラ的にどうかと思ったけれど、今は凄い頼りになる感じがするわ」
柴門としては取り分け自分がリーダーになりたいなどという願望を持っている訳ではなかったが、チームの一員としてどの道指示に従うのなら、リーダーには実力者であって欲しかったのである。
その希望はどうやら成就しつつあった。
「俺はあいつに言われた通り上で奴らの見張りをする。葵さん、美琴のことは頼んだぜ」
「任せて!なんとか体力と精神力の両方を完全回復して見せるから」
柴門はシェルターのドアから出て家屋の屋根に登り見張りを始め、葵は美琴を完全回復させるべく、今までと違うイメージをしてヒーリング能力を発動させた。
「早く探し出せれば良いんだけどな…」
外に出た飛鳥井は八神、匡、結月が最初に向かった方向へ小刻みに瞬間移動しながら進み三人を探す。
この頃、八神、匡、結月、そして先の戦闘で結月を守ってくれた巨大猫のチャラの三人と一匹は、化け物カラスの大群との戦闘後にお邪魔した家屋の中でそろそろ出発しようか?などと話している最中であった。
騒がしい戦場という状況にも関わらず、ぐっすり爆睡していた結月はすっかり元気ハツラツ回復し、覚醒巨大猫のチャラを仲間に引き入れようと勧誘する。
「チャラ~♪あなたももちろん私達と一緒に来てくれるわよね~♪?」
猫としては珍しくもないが、性格的にツンデレ感のある茶トラモフモフ覚醒巨大猫のチャラがプイッと後ろ向き、結月から目線を逸らす。
「ま、まぁ。どうしてもついて来て欲しいって言うならお前らの仲間になってやらんでもない、ぞ…ニャッ!?」
結月が背を向けているチャラに速攻で抱きついている。
「ど~~~してもついて来て欲しいの!ね、お願いよぉチャラ~♪」
「そ、そこまで言われたら仕方ねぇなぁ。お、お前らの仲間になってやるよ」
表情は見えずとも、チャラの声は一際嬉しそうな感情を帯びて聞こえた。
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