飛鳥井らがついさっきまで存在していた地点を中心に、1000羽前後集結している化け物カラスの大群へ向かってカラス王が指示を出す。
「我が僕達よ!この周辺に人間数人が身を隠している。手分けして探し出し、見つけ次第八つ裂きにするのだ!」
「カァーッ!カァーッ!カァーッ!カァーッ!」
王の指示に呼応した化け物カラスの大群が一斉に上空へ飛び立ち散らばる。
一羽一羽が2~3mある巨体の化け物カラス。その光景は圧倒的に異様であった。
元々カラスというのは人間からすれば狡猾で残虐性を連想させる動物である。
神の戒告によって覚醒したカラハグや化け物カラス達が、飛鳥井らを獲物と認識し追い詰めるという行動心理は当然と言っても過言ではないだろう…
一方、飛鳥井らが4人纏めて瞬間移動した先は、アジトである家屋の地下シェルターの中、つまり結月の自宅だった。
飛鳥井が抱いていた美琴を優しくベッドの上に寝かせ葵に言う。
「葵さん、疲れているだろうけど美琴の回復を頼む。出来れば体力だけじゃ無くて能力の回復もお願いしたいんだが…」
葵の治癒能力が現在可能なのは身体の負傷した部分と、根本的体力の回復ができる程度。飛鳥井の希望はRPGゲームなどでいうところのMPを回復して欲しいということなのだ。
MPの回復というのは、魔法で良くいう精神力的なものなのだろうが…
未知で未経験な難題に一瞬だけ困った表情をしたあと、葵がキュッと顔を引き締めて答える。
「やれるかどうかはわからない…だけど、みんなの力になりたいから全力を尽くすね!」
「さっすが元ナースの葵さん♪頼りにしてるよ♪」
陽気な笑顔の飛鳥井が今度は柴門に向かって言う。
「柴門、お前は屋根に登って敵が来ないか見張りをしておいてくれ」
「それは良いが、お前はどうするんだ?まさか一人であいつらを相手するつもりじゃないだろうな?」
「ハッハッハッ。自信を持って言うことじゃ無いが、どう楽観的に見積もっても俺一人であいつら全部を相手にするのは絶対無理!お前もカラス王の強さは身に染みて分かってるだろ。だから他の三人を探して連れてくる。カラス王と化け物カラスの大群を相手に勝つにはあの三人の力が必要不可欠だ」
「確かにな…」
いつもの柴門であれば強気な発言が出てもおかしくない場面であったが、カラハグに一撃で戦闘不能にされた事実により恐怖心が芽生えていたのか、いつもの調子は影を潜め、珍しく神妙な面持ちになっていた。
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