などと至極不愉快なことを言われて心中穏やかでない柴門が、服についた汚れを払いながら熱り立つ。
「カラスがアホなことほざいてんじゃねぇ。勝手に俺らの命を弄ぶような真似をさせるかってーーーのっ!」
言い終わると同時にジャンプしてカラハグの顔面を狙い渾身の右ストレート!
個人差はあれど、神の戒告の覚醒により人々の身体能力は格段に上がっており、柴門の身体も漏れなくグレードアップされていて、普通の人間の3倍以上もの威力がある。
無論、殴って吹っ飛ばすつもりだったのだが!?
「パシッ!」
「っ!?」
渾身の右ストレートはカラハグの左手によりあっさり止められてしまった。
右手を凄まじい握力で掴まれ、柴門の身体が長身のカラハグの左手にぶら下がった状態で身動きが取れない。
そこへ攻撃を放たんとカラハグの右腕が動く!
「クロウインパクト!」
「ドン」
「ぶふっ!?」
至近距離からの強力な衝撃波が柴門の土手っ腹を直撃し、口から血を吹き出し20以上も後方へ吹き飛ばさた!
「ズザザーーーッ!」
途切れてしまいそうだった意識を強い意志で引き留め、身を翻し片膝を突きつつ何とか倒れずには済んだものの、たったの一撃で柴門はぐったりとしている。
先ほどの件も含め単純に推測すると、カラス王カラハグの実力は紛れも無く桁外れなものだという結論に達してしまうだろう。
「ヴァサヴァサッ!」
カラハグが一言も発せず黒く大きな羽を広げ、一っ飛びで柴門の正面に降り立った。
「どうした勇ましい人間。まさかもう終わりというわけではあるまいな」
「…んぎぎぎぎぎぎ!げふっ!」
柴門が歯を食いしばりながら、ボロボロの身体で無理矢理立ちあがろうとして再び血を吐き出し倒れてしまった。
実際のところカラハグの一撃により、彼の体内では内臓破裂が起こりかなり危険な状態だったのである。
「…つまらん、無様な姿だな。やはり我とは力の差がありすぎたようだ。しかし僅かでも我を楽しませてくれた礼に苦しまずに死をくれてやろう」
カラスの顔故に無表情で不気味なカラハグが身を屈め、うつ伏せに倒れる柴門の頭部を砕かんと右腕を振り上げる!
「やめてーーーーーーーっ!!!」
「むっ!?」
美琴の叫び声と共に、右腕を振り上げたカラハグの身体がビタッと止まった。
化け物カラスの群れを止める際に能力を全開し、ドアのアンロックで力を使い果たした美琴が力を振り絞って動きを止めたのである。
「我のしもべ達に使った能力か…」
サイコキネシスで動けないはずなのにカラハグは喋った!?
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