柴門らの三人が化け物カラス達の鳴き声を聴き、ほぼ同時に上空を見上げ、人型の何者かにも直ぐに気付く。
「なんだ?真ん中の奴。こっちを睨んでやがる…」
不気味な人型の何者かと目が合い柴門が呟いた。
「葵さん、ロケット花火」
「だね。了解」
美琴は人型を一眼見て飛鳥井が注意喚起していた「カラスの王」だと迷う事なく断定し、葵に近寄って緊急用のビーコンもどきのロケット花火を打ち上げるよう耳打ちした。
葵が背負っているバックパックを即座に手元に寄せ、中からロケット花火、打ち上げ用の塩ビ管、点火用のチャッカマンを取り出し地面に急いでセットを始める。
その間、睨み合っていた柴門が臨戦態勢に入り身構える。
美琴にカラスの王と断定された者の頭部は化け物カラスのそれと余り変わらないのだが、目は黄色く光り、身体は完全な人型で赤い肌の強靭な肉体をしており、背中には黒く巨大なカラスの翼が付いていた。
「我はカラスの王カラハグ!愚かな人間である貴様らよ。我が領地で許可無く何をしている?」
上空から不意に話し出したカラハグの声質には、威厳と圧倒的なプレッシャーを感じさせるものがあった。
一瞬気圧されそうになる柴門だったが、カラハグの言葉が相当気に食わなかったらしく、怒りで顔を引き攣らせながら大声で返す。
「はぁ!?たかがカラスの分際でアホなことを囀ってんじゃねえ!何でてめえの許可が必要なんだ!?ってか、俺達はてめえらを全滅させる為に参上したんだぜ!わざわざのこのこと姿を現したことを後悔させてやるぜ!」
黙って言い分を聞いていたカラハグの表情は変わらない。否、カラスの顔故に変わらない。
こういう場面では沈黙と無表情こそが得手して不気味さをより深める。
「カァーッ!カッ!カッ!これはこれは久しく威勢のいい人間と会えたものだな。この住宅街に残っていた人間どもは喰らい尽くしてしまったが、貴様のような人間がまだ生き残っていたことを嬉しく思うぞ」
「カラスが余裕ぶってんじゃねぇよ」
「キィーン!」
アドレナリンが体内に溢れそうなほど充満し、怒りで爆発寸前の柴門が両腕にボマーを発動させ金色の光球が現れ出したその時!
「ヒューーーーーーーーーーーーーーー….パーーーン!」
チャッカマンを使って葵の点火したロケット花火が打ち上がり、予想していたよりも大きな音が街に鳴り響く。
「わおっ!いい音出すじゃない!…げっ!?あの数はちょっとやばいのでは!?」
気づいた時には上空を覆わんとする化け物カラス達が集まり出していた。
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