僕達の世界線は永遠に変わらない [車ゲット!?] [サバンナモニター]

僕達の世界線は永遠に変わらない

[車ゲット!?]

「おっ!やったぜ~!車ゲーーーット!おい、二人とも来てみろよ。良い車が見つかったぞ」

 半開きになった車庫の中を覗いて直ぐに柴門が喜びの声を上げ葵と美琴の二人を呼ぶ。

「本当に!?動く車なの?」

 葵が半信半疑で歩いて近づき、美琴は興味無さ気な表情でそれに続く。

「っしょっとぉ!」

「ガラガラガラ!」

 柴門が両腕で勢い良くシャッターを上げ、高そうで真新しい黒色の4WD車が姿を表した。

「こりゃかなり上等の車だな。鍵は掛かってんのか?…あっ、駄目だ。ロックされてるな」

「ひょっとして持ち主がまだ家に居るんじゃない?」

 この面子の中では思慮深い方の美琴が疑問を呈した。

「そうだよ~柴門く~ん。一度避難した人が家に戻るって可能性も無いわけじゃ無いし」

 面倒くさそうに柴門が応える。

「わぁ~ったよ。面倒だが確かめてみるか」

「あそこから家の入り口まで行けるんじゃない?」

 美琴が車庫の奥にあるドアを指差し、そこへ三人が向かい柴門が荒々しくドアを開けた。

「お見事~♪美琴のカンが当たってたようね♪」

 ドアから外に出ると、目の前にはタタミ10畳分以上ある庭が広がり、シェルター完備の結月の自宅ほどでは無いが、それなりに裕福そうな住人の家であることを三人に感じさせた。

 柴門が何も言わず無表情で玄関ポーチに上がり、鉄製のドア横に付いているインターホンのボタンを押す。

「やっぱ誰も居ないんじゃね?」

 10秒ほど待ったが中からは誰も出て来ることは無く、人の気配も全く感じられない。

「もう一回押してみて」

 美琴が柴門を促すと…

「ああもうしゃらくさいな!どなたか居ませんかーーーっ!」

「カチカチカチカチカチ!」

 柴門が大きな声で家の中に呼びかけ、インターホンのボタンを壊れそうなほど連打した。

…が、やはり何の反応も返って来ない。

「こうなりゃ強行だ」

「ちょっと待って柴門さん」

 我慢出来なくなった柴門が玄関を力づくで開けようとしたところを美琴が引き止める。

「中に何が潜んでいるか分からないわ。わたしのサイコキネシスでドアを開けるから、中から何が出て来ても迎撃できるように備えてて」

「ん!?ああ、それもそうだな。分かったよ」

 意外にも柴門は素直に言うことを聞き、ドアから離れ数歩後ろに下がった。

「じゃあまずは玄関の鍵を解くわよ」

 美琴がそう言ってドアのノブに向かって掌を向け、一度目を瞑り集中力を高めカッと目をあけた瞬間!

「ガチャリ」

 ドアの向こう側から内側の鍵が動いて解かれる音が聴こえた。

[サバンナモニター]

「ドアを開けるからね。任せたわよ柴門さん」

「ああ」

 美琴がドアに向けていた掌をゆっくり手前に引くと、その動きに合わせるようにしてドアが一人でに開いていく。

「ん!?なんか居るぞ…」

 ドアの正面で身構えていた柴門が家の中を見て何かに気づいた。

「なになに!?人じゃないの?」

 美琴の後ろに下がっていた葵が心配そうにして訊いた。

「人間じゃ無いのは間違いねぇ。テレビでしか見とことないようなでかい奴だ…名前は確かコモドドラゴン…」

「コ、コモドドラゴン!?何でそんなのが家の中に居るのよーっ!?わたし爬虫類は絶対無理ーーーっ!?」

 急に取り乱して異常な反応を示したのは冷静沈着なはずの美琴だった。
 冷静さを完全に失った美琴がブルブルと震えながら慌てて葵の後ろに隠れる。
 
 柴門がコモドドラゴンだと判断したのは当たらずとも遠からずと言ったところだろうが…

「待て!?こっちに向かって来る!人の家を壊すのは気が引けるが撃つぞ!ライトボムッ!!」

「ボッ!」

 家の中を走り向かって来る何かに危険を感じ、ボマー能力で咄嗟に攻撃を繰り出した!

「ボンッ!」

 攻撃は直撃したがその何かは全く怯まず柴門に飛びつく!

「やべぇ!?加減し過ぎた!」

「シャーッ!」

「ガシッ!」

「ぬああああああああああ!!」

 飛びついて来た何かが柴門の頭に噛みつことした寸前、口の上下に手を当てて防いだまでは良かったが勢いに負け、両者が抱き合うようにして後ろへ転がった。

 数メール転がったところでピタリと止まり、相手が何者か悟った柴門が叫ぶ。

「こいつコモドドラゴンじゃねーーーっ!巨大化したトカゲだ!」

 そう、今まさに柴門を噛み砕かんとしている者の正体はトカゲだった。
 それもサバンナモニターと呼ばれるオオトカゲの一種で爬虫類の愛好家に人気が高く、昆虫や小動物を主食とする肉食系の動物である。
 通常は成長して1mそこそこなのだが、このサバンナモニターは神の戒告の恩恵?を受け、その全長は4mに達するほど巨大であり、もはや恐竜と言って差し支えないだろう。

 そのサバンナモニターが上になり、地面を背に仰向けになった状態の柴門が口を閉じさせまいと耐えている。

「くっ…こいつ凄え力だ。美琴!こいつの動きを止めてくれ!」

「さ、柴門君。ごめん。今はちょっと無理かも…」

 答えたのは美琴では無く恐怖で硬直してしまっている葵。救援を頼まれた当の美琴はサバンナモニターを目の当たりにした直後、マンガのように泡を吹いて気絶していた。

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