「猫だけど猫って呼ぶな!チャラだ!名前は教えただろ!」
帯電していた姿から普通の状態に戻ったチャラは細かいところで憤慨している。
「ああ悪い。良くやったぞチャラ!」
取り敢えず言い直しておいた。
化け物カラスの生き残りが居ないか辺りを確認したけれど、一羽の姿も見えず気配も感じない。
もうたぶん大丈夫だろう…
「匡君。やったな。三人と一匹であれだけの数を相手に勝つことができた。これは僕達にとって大きな成果だよ」
まだ表情に疲労感たっぷりの八神さんだったが、立ち上がれるまでは回復したようだ。
「はい!俺も少しだけ自信がついたかも知れません」
僕の初戦は昨日初めて遭遇した化け物カラスとの一戦だったが、あれは戦闘と呼ぶよりも襲われて必死に抵抗しただけで、今回の戦いのように「カラスを殲滅する」という目的があったわけではない。
実質的にこれが僕の初戦闘と言ってもいいだろう。
「結月ちゃんもまだ目を覚さないし、暫くそこの家にお邪魔させてもらって休憩しよう」
「そうですね。それが良いかも」
今この場にいる中で元気そうなのはチャラくらいのものだ。
僕は八神さんの提案を素直に受け入れ、何気なく深傷を負っていた自分の腹部に目をやると、まだ内部の赤い筋肉が剥き出しの状態だったが、外部の皮膚が急速に復元されつつあった。
それを見て、我ながら人間離れしてしまったことを痛感する。
「じゃあオレがこの子を運んでやるよ」
チャラはそう言って結月を甘噛み?でくわえヒョイっと自分の背中に乗せる。
それから三人と一匹は公園の隣にある誰も居ない空き家にお邪魔して、暫くのあいだ体力の回復を図ったのだった…
一方その頃…
柴門、葵、美琴のパーティは順調に住宅街の化け物カラスを駆逐していた。
「ストーーーップ!」
「ギャァ!?」
美琴のサイコキネシスによって、空中を飛び回る化け物カラスが金縛りにかかったかのようにビタっと止まり…
「だりゃーーーっ!」
「ボボボン!」
カラスが落下する前に紫門のボマー能力による爆発で粉砕していく。
前日からの実戦で確立した百発百中の連携により、片付けたカラスの数は既に100羽を超えていた。
「っしゃ!あいつら相手の戦闘にやっと余裕が出て来たって感じがするな」
「わたしもそれは同感だけど、油断してカラスに足元を掬われないようにね」
紫門が余裕綽々のニヤけた顔をしていたので、歳下だが大人びた感のある美琴が軽く注意を促した。
「なんだか二人ばっかり活躍してズルい~」
この場で一番の年長者である葵は頬を膨らませながら拗ねていた。
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