八神さんが目を閉じて集中力を高め両腕を地面に向ける。
「鉄錬金、アイロンネット…」
「ビキキィ」
八神さんの足元に黒く細い鉄の網が現れた。
線系は1㎜ほどで網目の幅は10cmくらいだろうか…その網が徐々に広がっていく。
「やはり時間がかかるな….」
鉄の網の生成が軌道に乗ったのか、八神さんが目を開けて呟いた。
その呟きが気になり問いかける。
「作戦実行までに何とかなりそうですか?」
「バリアが解けるまであと約2分。それまでには何とか間に合わせるよ…錬金術は無から有形物を生成する訳じゃないからね。今はバリア内のあらゆる物質を錬金術で鉄へ変化させて網を生成しているところなんだ。ほら、もうすぐこの公園にある遊具や備品が消えていくよ」
言われて公園を360度ゆっくり眺めると、確かにさっきまであった滑り台やべンチなどが既に半ほど消えていた。
凄いな錬金術…
「匡君、そろそろ僕から離れた方がいい。鉄の網に巻かれてしまう」
「おっと!?こんなところまで!?」
公園を眺めているあいだに鉄の網はどんどん広がっていたらしく、「ビキビキ」と音を立てて、八神さんと5mほど離れていた僕の足元まで来ていた。
僕は慌てて八神さんと更に距離を置く。
そこから3mほど広がりを見せた鉄の網だったが、突然動きが止まったかと思うと下の網に重なり出し、分厚い黒い塊となっていった。
「ガンガン!ガンガン!」
いきなり上空の方からバリアを叩く音が聴こえ音のする方へ目を向けると、カラスが何羽かバリアを壊そうとクチバシで突いていのが見えた。
そして他のカラス達が…
「なっ、なんだ!?なにをしてるんだあいつら!?]
バリアをベッタリと覆い尽くしていたカラス達の死骸を食べていたのである。
動物の世界で共食いはそう珍しくは無いと思うが、やはり見ていて気持ちの良いものでは無かった。
だが、そのお陰でバリアの外の様子が分かってくる…
「待て待て!?どんだけ集まってるんだ!?ざっと…いや全然分からん!」
もうとてもではないが数える気にはなれなかった。
下手したら1000羽はいるかも知れない。
こんな数の化け物カラスを八神さんの網で本当に囲えるのだろうか?
いや、もう信じるしか道は無い…
「匡君!そろそろだ!こっちに来て!」
「あっ!はい!」
八神さんに呼ばれて鉄の網を超えてそばに駆け寄る。
「良いかい。チャンスは一度きりだ。集中して僕の合図を待って」
「了解です!」
僕と八神さんは上空を見上げ、バリアが解ける瞬間にいつでも動けるよう備えた。
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