「どうやら僕の能力は一点集中型で、今のところ遠距離攻撃も自信は無いです」
これが先刻の戦闘で得た結果の自己分析。
「匡君が能力を発動したところは見ていたよ。僕の見立てでも同じ結論に至ったんだけど…君が至近距離の敵に攻撃を放った時、その背後の敵も連鎖的に能力の影響を受けていた。一直線ではあるが破壊力は抜群だし、一瞬で大多数の敵を葬ることも可能だということも分かっている…」
八神さんはそこまで言うと、右手で顎を押さえ黙って何かを考え始めた。
そのあいだに結月とチャラの方へ目を向ける。
「なにしてんだ!?お前ら!」
僕は叫ばずにはいられなかった。
あろうことか一人と一匹は寄り添って寝ていたのだから。
百歩譲って結月が寝ているのはまぁ許せる。力を使いすぎた所為で休憩が必要だろうからな…
問題は…
「チャラーーー!お前が寝ているのは納得がいかーーーん!」
チャラが面倒くさそうにして目を開ける。
「うっさいなぁもう…久々に人間と戯れあったら楽しすぎて疲れたんだ。放っといてくれないか」
「なっ!?放っとくか!馬鹿猫ーーーっ!そんなんで疲れんな!さっさと戦闘の準備をしろよ!」
僕の言葉はチャラに届いている筈なのだが、猫の癖にやれやれといった顔をしたあと、生意気にも目を閉じまた眠り出しやがった。
「もう我慢ならん!」
そばに行ってゲンコツを食らわせようとしたところで八神さんが僕引き止める。
「まぁ落ち着いて匡君。たぶんだけど、あの猫は無力になっている結月ちゃんを守ろうとしてるんだと思うよ。その方が僕らにとっても好都合なんじゃないかな?」
「…あいつが結月を守っていれば攻撃に専念できるってことですか?」
「そういうこと。じゃあ、時間も無いし考えた作戦を説明するよ。僕は今から錬金術でとてつもなく大きな鉄の網を生成する。バリアが解けたあと、カラスの大群を引きつけてから一網打尽にするつもりだ」
カラス達がどれくらいの数いるのか分からないが、そんなことが可能なのだろうか?
僕なんかよりずっと頭の良い八神さんのことだ。そこはある程度計算しているのだろう…
「そこを僕の能力で攻撃して全滅を狙うんですね?」
「ピンポーン。でも鉄の網で囲ったあと直ぐに攻撃はしないで欲しい。僕が限界まで鉄の網を収縮して攻撃範囲を狭めたら合図を送る。その時に漏れなく消し去ってくれ。理論的には群れの真ん中に君の全力を一撃入れれば片がつく筈だ」
「オーケーです!ぶちかましてやりましょう!」
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