「きゃ~♪何やってんのよあの人~♪」
葵さんが暴発寸前の柴門さんを見たにも関わらず、緊迫感など微塵も感じさせない調子でそう言った。
「待って~♪わたしのサイコなんちゃらであれを封じ込めてやるわぁ~♪」
続いて緊張感が皆無の美琴さんによる大言壮語。酔ってさえいなければ頼れそうなんだけど…
「むにゃ、なんだか騒がしいな…ど、どわっ!?何をやってるんだ柴門君!?」
柴門さんに一番近い位置で眠っていた八神さんが騒ぎに気付き、起きて直ぐに柴門さんを見て驚いた。
「てっ鉄の錬金術ーーーーっ!!」
「ドババババ!」
八神さんが右手を突き出し瞬間、液体のように柔らかそうな黒い物体が掌から次々に放出される。
黒い物体が柴門さんと赤い光球の周りに広がって行き、鉄の大きな球体と化してしまった刹那!
「ボゴン!」
鈍い音と共に鉄の球体が一瞬膨張して少し戻って静かになる。
これは僕の推測だが、たぶんあの中で鉄の球体に触れた赤い光球が爆発連鎖を起こしたのだろう…
「きゃははは~っ♪柴門自爆した~♪」
「え~?♪まさかこのくらいで死なないわよね柴門く~ん♪」
いや笑えないっすよーっ!
酒の所為とはいえ、どこまで陽気なんだこのお姉様方は!?
ま、まぁ。流石に柴門さんも脅す程度に威力は調整していただろうから大丈夫だろう…きっと。
八神さんは鉄の球体へ手を向けたまま呆けている。
「八神さ~ん♪鉄の錬金術を解除してもらえますか~?♪中から何が出てくるか楽しなんですよ~♪」
この後に及んでまだ酔いの覚めない飛鳥井さんがおもしろがるように言った。
ハッと我に帰った八神さんが手を下に下すと、鉄の球体が段々と薄くなり、プスプスと焦げた姿で倒れる柴門さんが見えた。
「し、死んじゃってないですよね?これ…」
僕が不安になってそう言うと…
「オッケ~♪ここは元ナースのわたしの出番ね~♪任せちゃってよ~♪」
葵さんが倒れている柴門に駆け寄る…では無く、スキップしながら鼻歌混じりに近づき腕を取って脈を確認する。
「は~い♪柴門はちゃ~んと生きてるよ~♪でもでもぉ♪爆発のダメージがやばそうだから治癒してあげるね♪」
生きてて良かった~…
八神さんの方へ目を向けると、僕と同じようにホッとした顔をしている。
「ほい♪治癒完了~…ん…なんだか急に眠気が…」
柴門さんの焦げた身体を回復させた葵さんが、能力の乱発で力を使い果たしたのかそのままバタリと倒れ、柴門さんに添い寝するような形であっという間に眠ってしまった。
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