そして僕の意識は途切れた。
どれくらいの時が経ったのだろう…
五感の全てが働かない無の状態から意識が戻り、回転の遅い思考が始まる。
瞼を緩やかに開けても、最初はぼやけてほとんど何も見えなかったけれど、目をパチパチ動かすと徐々に鮮明な景色が広がって行く。
目の前には見慣れた建造物がある。
「僕の家…」
僕は現在住んでいる家の上に浮いているようだ。
幼い頃に実の父親と小屋の前で別れたあと辿り着き、あれから高校生になった今でもずっと住んでいる家…
築年数は知らないけれど、極一般的な作造りをした木造建ての平家。
普段は瓦がはりめぐされた屋根には雪が降り積もり真っ白。あたり一面も白い雪で覆われていた。
平地より高い山上という環境もあるが、異常気象でもない限り、雪が降り積もっているのだから寒い冬の季節であることは間違い無いだろう。
しかし、問題は季節では無く今いるこの世界がいつなのか?である。
またいつかの過去なのか?それとも僕が病院のベッドで眠る現在なのか?はたまたタイムトラベルの話でたまに出てくる別の世界線?
もし、上手く現在に戻れているなら、病院へ行き、身体に戻れる方法を模索したいところだが…
家の中に入れば、いつなのかが判明する何かがあるはず…
そう思って家の入り口へ移動しようとした矢先。
家の玄関の方から声が聴こえて来た。
「行ってきまーす!」
「雪に足を取られないようにゆっくりと歩くのよ~!」
「は~い!」
玄関の戸が開きランドセルを背負った少年が勢い良く出て来たが、地面に積もった雪に足を取られて転びそうになる。
「うわっ!?…いっけね~っ!注意されたばっかなのに」
少年の顔を確認して、ある程度だけどいつなのかが判明した。
この少年は恐らく小学6年生くらいの僕だろう…
僕は意外なことにこの少年を見てもあまり驚かなかった。
過去の自分を一度見ているという経験と、つい先ほど少女と遭遇したばかりで常識の感覚がおかしくなっているのかも知れない…
体勢を立て直した小学生の僕が慎重に歩き出す。
ここで自分の頭で燻る何かに引っかかり、小学生の僕についていくことを躊躇う。
なんだ?僕は何が気になっているんだ?
直感だけで考えれば、小学生の僕にはついて行かないほうが良いような…
小学生の僕が遠くまで歩き見えなくなるまで迷ったが、直感を信じてこの場に残り家へ入ることにした。
「あらあら、あの子ったら開けっぱなしで行ったのねぇ」
懐かしい二人目の母の顔…
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