暫くのあいだ同じ姿勢で黙ったまま掌をかざし、「ふぅっ」と溜息を一つついて手を退ける。
「ふふ~ん♪彼女はこれで大丈夫よ~。おっと、この治癒能力については詳しく訊かないでねぇ♪このあいだ覚醒したばかりでわたしもよく分かってないから~♪」
げっ!?このあいだって…
そんなに遅くナインスセンスが覚醒する人もいるのか?
「ほれほれぇ♪ジッとしてないで結月ちゃんをあそこのソファーまで運んであげなよ~♪」
なぬっ!?生まれてこのかた女子を抱き上げたことは無いのだが!?
躊躇している僕を見て、酔っ払ってノリノリ葵さんが更に煽る。
「そんなことで照れてるようじゃ女の子と付き合えないよう♪」
何で彼女がいないの前提だよ!まぁ事実上まだいないけど…
「わ、わかりましたよ」
僕は渋る訳では無く、単なる恥ずかしさで躊躇していたのだが、結月に近付き抱き抱える姿勢を取った。
背中と膝の裏に腕を当てて持ち上げる。
「ん!?かっ、軽すぎる!?」
結月の身体が軽すぎるのか、僕の身体能力が上がった所為かは分からないが、全く重さを感じない…と言うか、結月の身体は僕の腕から離れ宙に浮いてしまった。
「は~い♪ここはお姉さんに任せて~♪わたしのナインスセンスはサイコキネシスよぉ♪」
サイコキネシス!?
泥酔状態の葵さんに負けず劣らず酔っ払っている美琴さんが、これまた陽気に自分の能力をお披露目する。
「外しちゃダメよ~♪美琴~♪」
葵さんが笑いながら注意?するが、浮いている結月の身体がふらふらと上下に揺れ出した。
「ほら~♪葵が余計なこと言うから集中できないじゃない~♪」
だ、大丈夫じゃ無さそうだな…
僕は保険のため、宙にふらふら浮く結月の真下に移動して、いつ落ち着ちても受け止められる体勢を取る。
でも、心配していたことは起きず、無事にゆっくりとソファーの上に着地した。
「キャハ!成功~♪匡く~ん♪あそこに毛布があるから掛けてあげてね~♪」
酔って完全にキャラの変わった美琴さんはそう言って、陽気になってはいるが余りキャラの変わらない葵さんとまた呑み始めた。
ともあれ、二人のお陰で結月の身体の心配が消え、気持ち良さそうな寝顔をしているから良しとするか…
僕は美琴さんの指示に従って毛布を取り、そっと結月の身体に掛けてやった。
「匡~!まだ呑めるか~?呑めるならこっちに来て語ろうぜぇ~」
今度は最初に酔っ払いと化した柴門さんに呼ばれてしまう。
「あまり呑めませんがまだ付き合えますよ」
そう言って、柴門さんと飛鳥井さんの座っている場所へ移動した。
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