マジか!?…
医者の不養生…いや、そんなことわざとはずれているかも知れないが、世の中には自分の健康状態を顧みずに、ぶっ倒れるまで患者の治療に当たる医師も居るんだな…
「その石崎先生は元気になったんですよね?」
僕はどうしても知りたくなり、葵さんの心情も気にせず聞いてしまった。
「俺達の目の前で倒れた時に、俺と葵さんともう一人の看護師が確認したんだが、残念ながら呼吸と心臓は止まっていたよ」
「えっ!?」
聞かなければ良かった…
ハッとして葵さんの方を見ると、彼女の表情は悲痛なものとなり、それを隠すように突っ伏し泣き出してしまった。
「葵さん、僕、す、すみません!」
僕は葵さんの視界に入っていないのに、とにかく謝らなければと思い席を立って頭を下げた。
すると葵さんが涙でいっぱいになった顔を上げる。
「いいのよ匡。貴方は何も悪くない。これはわたしが早く乗り越えなきゃならないことなの。いつまでも引きずって悲しんでいても前には進めないわ。逆にごめん…」
そう言い終えた葵さんはまた突っ伏してしまった。
「あ…いえ…」
ここで「ふぅ」とため息を一つつき、飛鳥井さんが頭を掻きながら言う。
「あ~、俺の話し方が下手くそな所為で何だかしんみりした空気になっちゃったな。悪い…これ以上病院でのエピソードを続けるのはよそう」
「今はその方が良いかも。あの病院では碌なことがなかったし…」
ずっと黙っていた美琴さんが言葉を発して飛鳥井さんに同調した。
これは僕の憶測でしかないが、この場に葵さん以外の病院関係者が居ないということは、それなりの事情があってのことだろう。最悪のケース、他の人はみんな亡くなってしまったとか…
いずれにしても僕は病院での出来事を敢えて訊く気にはもうなれなかった。
「まぁ病院では色々あった訳なんだけど、美琴の回復を待つために一夜だけ病院のベッド全員寝たんだ。んで、翌日の朝に美琴の意識が戻り葵さんを含めて話し合い、病院から出て5人が共に行動することで話しが纏まって、取り敢えず葵さんの家があるこの住宅街に足を向けたんだ。
そして俺達が葵さんの運転する車で住宅街の道を走っていると、フラフラと危なっかしい歩き方をしている少女を見つける。それがここに居る結月ちゃんだったんだよ」
飛鳥井さんは美琴さんのエピソードやそこでなぜ5人なのかという説明は意識して省いたんだな…
しかし結月の登場でここに居る6人全員が出揃ったことになる。
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